表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
右の拳と左ミドル 【筋トレとバトルの小説】  作者: 松明ノ音
第二話 辿り着きたい場所
37/55

ヒロ式流水の舞(仮)


 ヒロは重心を低くした。顎のすぐ下で、やや前傾。対するハルは、先週のヒロのようなフルコン空手の構えだ。左構えは変わらない。

 ハルが道場内で、キックボクシング全開の構えをすることはない。師範やマユに言われたわけではなく、ハルなりの感謝と敬意だった。

 右の前蹴り。先にハルが動いた。

 ヒロは分かっていた。右手だけで下段受けのように受けながら体を半身にし、左足を前進するとともに左拳でジャブのように胸を突く。道場内では、蹴りは顔面に出していいが、突きは顔に当てないルールになっている。

 牽制の前蹴りだったため、ハルは対応できる姿勢。右腕を縦にして防ぐ。すでに地に右足は着いている。着いたと思った右足の膝が伸び、折った左膝がヒロの顔面に飛ぶ。

 そこに、ヒロの姿はなかった。突如ハルの左脇腹で爆発が起きた。

「がぁあっ!」

 ハルの体が一メートルほどズレた。爆発源の方向を見ると、ハルが正拳突きを終えた姿勢で前屈立ちをしていた。

「そこまで」

 マユの声が終わりを告げる。

「――まだッ」

 ハルが抗議の声を上げるが、あんたが望まないんでしょう? というマユの目で取り下げる。

 諦めるようにハルが、俯いて首を振る。

「へっへー、今日のトコは俺の勝ちだな」

 ハルは毒気を抜かれたように、ため息を吐く。

「……早かったね。この早い決着が、実力差だなんて言わないでほしいんだけど?」

 いつも飄々としているハルが、拗ねたように言う。

(一対一でやると、こうなるかぁ。受けた瞬間には移動しているから、二つ以上攻撃を仕掛けると一つ目で読まれていた場合、攻撃したつもりが隙だけ曝してる)

 考えていると、マユが答えた。

「そうは言わないわ。これは、ハルもヒロも知らない知識の問題よ。ヒロが多人数の中で偶然掴んだ、捌きよ」

「サバキ? 体捌きとかの捌きかよ? ヒロ式流水の舞っていう、かっちょいい名前、もう考えてたんだけど」

 今度は、ヒロが拗ねたように言う。

 その名前は確かにかっこいいけど、とマユは肩までの髪をゴムで纏めながら前置いて言う。

(マユもマユで変な子なんだよなぁ)

 ハルはそう思いながら、心の中でくすくすと笑う。負けた悔しさも、薄らいできた。

「分かりやすくやりましょ。ヒロ、ムービー撮って。ハル、今度はわたしとよ」

「え、僕?」

「えぇ。さっきのヒロと同じテンションでやりなさい。ただ、十秒だけね」

 いつも、ハルやヒロがマユとやる時には、寸止めでやっている。ハルやヒロが本来女子を殴れないことと、二人の腕力と脚力が強くなりすぎたため、周りが心配してのルールだった。

「……わかった」

 ハルが少し考えて言う。体格や体力では、ハルやヒロが大きく勝る。しかし、技術では二人はまだマユに敵わない。

 試合時間が長ければ、体格や脚力で押しつぶすことができる。十秒であれば、マユは避けきるだろうと思ってのことだった。

 ハルとマユが、道場中央で向かい合う。

「それでは」

 ヒロがその中心で立ち、端末を持って言う。体と手が大きすぎるため、スマホが小さく見える。

「はじめ!」



 マユは左利きだ。ハルも左構えのため、オーソドックス対オーソドックスの鏡合わせのようになっている。

 ジャブ、というか刻み。

 ハルの右拳がマユの胸元に飛んでくる。

 マユは後ろ足を少し曲げ、拳一つ分下がる。ハルは出した右手を戻さず、マユの首の後ろに手を開いて添える。キックボクシングのように開かないグローブではない、指の出た拳サポならではだ。

(マジかよ)

 顔面への膝でしかない。その遠慮の無さにヒロが驚く。サポーターの上に膝サポを着けているとはいえ、ハルの殺人膝である。

「がっ」

 その膝が届く前に、ハルが背中から道場の床に落ちた。マユはハルを見下ろすように横に立ち、足を持ち上げてハルの顔の横に、

ドン

と軽く音がする程度に落とした。

「それまで、だな」

 ヒロは、少し安心するように声を上げた。マユの技量を疑ったわけではないが、やはり心配だった。

「あー、連続でやられた」

 マユへの信頼もあったが、先にヒロに負けた悔しさも残っていたのだろう。それが顔への膝に現れたのだとしたら、やはりやり過ぎでもある。

「動画撮ってても、イマイチ分かんなかったんだけど、結局どういうことだよマユ?」

「今から説明するわ。とりあえず、携帯並べましょうか」

 そう言って、マユは再びヘアゴムを外した。


ご覧いただき、ありがとうございます。


感想、評価、レビューにより、作者の下がり気味なモチベアップ、手抜き部分の現象などが起こります。アへ顔晒して嬉ションもします。


どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ