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右の拳と左ミドル 【筋トレとバトルの小説】  作者: 松明ノ音
第二話 辿り着きたい場所
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初めてのプランク


「生徒会長と何かあるか? 何でそんなことを聞く」

 筋トレ館。マナブは言いづらかったが、ヒロハルの名前を出した瞬間、会長が不機嫌になったっことを遠回しに説明した。

「まぁ、僕たちはむしろ尊敬してるけど、あっちには思うところがあるんじゃない?」

 体を回旋させながら言うハルが答える。よくわからなかったので、はぁ、と相づちを打ちながらマナブもラジオ体操を続ける。

「……よく脱ぐ問題児だからな、俺らは」

 ヒロが笑う。ユウダイも声を上げて笑って、ラジオ体操の曲が終わった。何となくこの話題が終わったようになった。

「さて、今日はどこを鍛えようか。右の肘が悪いってのは、どうしても限定されるけど」

「ハイっス。昨日下半身やって筋肉痛残ってるから、腹筋背筋とかの体幹がいいっスかね?」

 どうやらすでに、ユウダイはハルに肘のことを伝えていたようだ。

「じゃあ腹筋かなぁ。ヒロ達はどうするの?」

「そうだな、マナブはどこか鍛えたいトコあるか?」

「ボクは言われるがままやってますけどー、胸と脚は筋肉痛ですね」

 ふむ、と言って、二人は考えるように黙った。やがて目を合わせ、

「じゃ腹筋か」

「そだねー」

と結論付けた。

(仲いいなぁ)

 何だかんだ、マナブとユウダイはこの一週間二人が揉めたことを見たことがなかった。小競り合いをするような時も、最後には筋肉を褒め合って終わる。

(それは気持ち悪いけど)

「じゃ、準備運動も兼ねて軽いプランクからやろうかねぇ。マットコーナーに行こう」

 ハルの言葉で一同は、端のマットコーナーへ移動した。

 器具コーナーでは、学長をはじめ教師数人がフォームを指導している。学長から姿を認められ、バチコンと音がしそうなウインクを数度され、マナブとユウダイは歩きながら会釈をした。

 器具コーナーに比べて、マットコーナーはあまり人がいない。ストレッチよりも筋トレの時間が多くなるため、当然ではある。

「準備運動として、形の説明だな。形は大体知っているか?」

 例によってマナブは見たことがある程度だったが、ユウダイはやったことがあるそうだ。

 二人ともやってみてよ、というハルの言葉で二人はまず四つん這いになった。

 そこから肘を突いて、合図を待った。

「まだだぞ。肘は直角だな」

 ヒロが言いながら、マナブの腹を支えて肘を直す。

 当てられた掌に、ドキリとする。

(でかっ!)

 ヒロの掌は大きく、力強かった。ただそっと置いているだけなのに、揺るぎない。全体重をかけても全く問題なく支えられそうだった。

「オーケー、膝を浮かせ」

 その声に我に返り、膝を浮かす。掌は添えられたままで、落ちない状況になっている。

「段々離していくからな。腹筋に力入れろ」

 その声で、腹筋に力を入れる。肘にも体重がかかってくる。

(あ、これダメだ)

 完全に離されてもいないのに、心も体も弱気な姿勢になる。膝が、落ちてくる。

「おっと、まだだぞ。最低三十秒は耐えてみろ」

(マジですか……)

 ヒロがこういう時、最低ラインを超えるまではやらせるということを、マナブは理解していた。いつの間にかヒロの掌は移動し、膝が支えられている。

 ユウダイの方は、ハルからフォームを一度直してもらって準備が完了している。

「じゃあスタートね」

 そう言ってハルは、いつの間にか持っていたストップウォッチのボタンを押した。マナブが力を入れた時点で、ヒロの掌が離される。

 数秒もすれば、腹筋がぷるぷると震えてくる。その震えが激しくなってくる。

(でも、できるはず……!)

 ヒロはできないことは、絶対に言わない。ヒロが言うならば、それは気力不足以外にない。燃えていないということだ。

 震えは伝播する。腹筋上部がキツかったのに、腹筋の下部が辛くなってくる。それでも、上部が楽になるわけではない。

「腰上がってるぞー。下げ過ぎても駄目だが」

 マナブに上がっている意識はなかったが、向かいの鏡を見ると確かに上がっていた。少し下げてみるとキツさが増す。無意識に楽な姿勢に体はなろうとしていた。反省し、鏡を見て姿勢をキープする。

 鏡越しにユウダイを見ると、ユウダイも小刻みに震えていた。よく見れば、ハルがユウダイの姿勢を厳しく修正している。

(ユウダイも辛いんだ)

 そう思うと、負けられない気持ちになってくる。筋肉は少ないが、体重もマナブの方が軽いのだ。

「はい、終わりー」

 その言葉とともに、膝から崩れ落ちる。

「ぅあー、ぷるぷるする」

  崩れ落ちたまま、伸ばす。一秒も無駄にはできない。次のヒロハルの台詞は分かっているからだ

「じゃあ十五秒後なー」


「「ひぃぃぃいいいい!」」


 結局、二人で悲鳴を上げながら五セットやった。

 肩肘を立てて身体を横にし、他方の手を上に上げるサイドプランクを左右三セット行った。

 前方の鏡を見ながらやり、フォームを常に意識した。というか、二人のデカい男にさせられた。

「なかなか、ちゃんとした姿勢でやるとキツいっスね」

 ユウダイもマナブと同じように、辛そうだった。普段使わない筋肉というのは、スポーツ経験者もあまり差はないらしい。

「じゃ、次が本番ねー」

 今のはウォーミングアップだったらしい。

「「ひぃぃぃいいいい!」」



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