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右の拳と左ミドル 【筋トレとバトルの小説】  作者: 松明ノ音
第二話 辿り着きたい場所
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比武イントロ②


 比武のイントロは、体育館で行われた。説明するのは、龍造寺生徒会長だった。本当、芸能人にいそうなくらいカッコいいなぁと、マナブは思う。

 五人の龍造寺四天王も、サポーターや説明の紙を配ったりと、あくせく働いていた。

 それぞれに配られたサポーターを手にした生徒は、神妙な顔をして聞いている。

「戦歴やステータスのデータについては、以上のとおりです。やりたい方は、参考にしてください」

 説明は、サポーターの機能からだった。かなり資金が使われていることに、マナブは驚いた。ユウダイは、マナブが知らないことに驚いていた。

 龍造寺会長の説明は、丁寧でわかりやすいものだったが、拭い切れない違和感もあった。マナブは隣のユウダイに確かめるように聞く。

「なんか、会長って、比武やってほしくなさそうだよね?」

「そんな感じするっスね。空手部の人だから、積極的にやりそうなもんスけど」

 投げは認められているが、関節技は認められていないなどの説明が続いた。サポーターで怪我を防止できないものについては、厳しい規制があるようだった。異性との比武や、Classが二つ以上離れている者同士は、両人の強い希望がなければ原則禁止で、上のClassの女生徒が下から希望しなければ成立しない。

 同じClassか下のClassから挑まれれば、原則受けなければならない。しかし、比武をその日行った者で、希望しなければ、やらなくてもよいということだ。怪我をしていれば、アカウントの比武の機能だけは凍結される。ポイントの使用やチャットは可能らしい。

 説明は半分ほど終わって、それからは、望まない比武をいかに避けるかの方法を、会長は説明し続けた。

 会長の説明する時の表情はどこか物憂げで、やっぱりやって欲しくなさそうだと、マナブは思った。


 体育館から戻り際、龍造寺四天王に捕まった。

「やぁ少年たち」

「始業式から筋トレ館に行ったそうだな」

「初日から行くとは」

「やはり我らの予想通り」

「見込みのある二人だ」

「「我ら龍造寺四天王!」」

「「「喜ばしく思うぞ!!」」」

 相変わらず話し方が鬱陶しかったが、先輩なのでむげにもできずにマナブは立ち止まった。他のクラスメイトは、突然現れた生徒会の先輩にどうしていいのか分からなかったのか、マナブとユウダイを残して教室へ戻っていった。

「ありがとうございますっス!」

 先輩と話すことに慣れたユウダイが、ほとんど対応した。

「二人でトレーニングしているのか?」

「いきなり初心者が二人で」

「やり方を学ばずに」

「器具を使うのは」

「感心しないな」

「「我ら龍造寺四天王が!」」

「「「見てやろうか!?」」」

 少し鬱陶しく思いつつも、気遣ってくれる龍造寺四天王には、素直に嬉しかったし感謝した。

(いい人たちなんだなぁ。変態だけど)

 正直な感想だった。そう思うと、仲良くなりたい気がほんの少しして、マナブも勇気を出して話した。

「ヒロ先輩とハル先輩に教えてもらってます。先生たちにも」

 そう言うと、龍造寺四天王は五人揃って少し黙った。

(あれ、何か変なこと言っちゃった?)

 不安になったが、あの二人なら怪我しないように教えてくれるだろうと、また三人に分割して話し出したので、安心した。

「お前たち、何をしている?」

 突然の声に四天王が振り向くと、生徒会長がいた。

「君たちは?」

 龍造寺会長は近くで見ると、男でもドキっとするような顔だった。その美貌と、どう言っていいかに戸惑っていると、四天王の一人――おそらくナリマツ先輩――が説明した。

 その説明が、屋上で朝から服を脱ごうとしていたことについてだったのは、諦めるしかなかった。会長は困ったようにため息を吐いた。

「……まぁ、学校というか、学長も黙認――というか自らやってることだから、厳しく注意はしないけど、節度を守ってね」

 学校以外でやったら怒るよ?

 と言われた。学長の方針と常識に板挟みされているのか、複雑そうだと、マナブは思った。

「会長は、生徒に比武をしてほしくないんスか?」

 気軽に聞けるユウダイはすごいとマナブは思ったが、気になっていたので、思わず会長の顔を見た。

「そういうわけじゃないよ? ただ、望まない生徒も一定数いるだろうから、無理にやる必要はないと思っているだけさ」

 腑に落ちない気もしたが、会長の立場としては、真っ当な理由だろう。

「会長は空手部って言ってましたスけど、序列高いんスか?」

 ずけずけと聞きたいことを聞いてくれるユウダイに、ありがたいと思いながら、怖いとも思った。

「私が、春校で一位だよ。その影響で区域でも高いけど、私は校内でしかやらないからね」

 そんなに興味はないよ、と締める。

(サラッと言えるのカッコいいなぁ、すごい)

 そう思うと、考えたことが自然に口に出た。

「やっぱり、ヒロ先輩やハル先輩も高いのかなぁ」

 ユウダイに向けて言った言葉だったが、場の空気が締まったのを感じた。緊張が走り、マナブとユウダイは怯んだ。会長の表情を見れば、冷えたものになっていた。

「……君たちは、彼らと仲良くしているのか?」

 怒られているような気になって、黙ってしまう。

「まぁ、昨日の状況から有り得ないことではない、か。しかし、ついて行く先輩は選んだ方がいいと、助言しておこう」

 そう言うと、会長は龍造寺四天王を引き連れて、去っていった。会長の後ろ姿を追いながら、龍造寺四天王が両手を合わせて、ごめんなというジェスチャーをしていた。

 呆気に取られて、マナブはユウダイと六人の背中を見送った。

「……びっくりしたっスね」

「ちょっと怖かった。何か、あの二人とあるのかな?」

 ヒロハルの二人に聞いてみたいとも思ったが、今のような空気になるのは怖かった。

「あ、そういえば僕たち置いてかれてる!」

「そうっスね! とりあえず教室戻ろうっス!」

 二人で、教室へと走って戻った。

 何とか間に合って、ホームルームを受けて筋トレ館に向かった。



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