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右の拳と左ミドル 【筋トレとバトルの小説】  作者: 松明ノ音
第一話 始める春の初め
19/55

行くぜ夏校!


 そのスパーリングを経て、今の関係に至る。

「まぁ、いいじゃないですか。あたしも大人になったってことで」

「胸は成長してないみたいだけどねー」

「余計なお世話!」

 愛は言いながら、ハルにジャブを二発出す。ハルは首を振って避ける。

 他愛ないように見えて、どちらもレベルの高い動きだった。

「よぉ、イチャついてんなー」

 二人が振り向くと、いつの間にか砂袋の間から出ていたヒロがいた。黒いタンクトップから、蒸気が煙のように立ち上っている。頭からも滝のように汗が流れているが、赤い髪は上を突いている。どうなってんだろあの髪、と愛は思う。

「交代? ヒロ」

「あぁ、使ってくれ」

 ハルは愛に「またね」と声をかけて、砂袋の間の戸を閉めた。

 間を置かずに、

 ダァンッ

という音が響く。

 ダァンッ

 ダァンッ

 ダァンッ

 ダァンッ

 ダァンッ

 …………。

 愛は、戸で見えない向こうのハルを見続けていた。

「中学生がするもんじゃねぇよ、悲しい恋なんざ」

 声に振り向くと、シェイカーを口につけるヒロが、愛の方を見もせずに呟いていた。

「もう高校生になりました! それに、ヒロさんには関係ないでしょ!」

「ま、そうだな」

「……ヒロさんとハルさん、一緒の人を好きなんですか?」

 ヒロを向いて聞いたが、いつも通り「さぁなー」と適当な返事で返された。

 愛は、ハルとヒロが何のために鍛えて、何のために強くなろうとしているのかを、知っているわけではない。愛の父が言う、

 ーーありゃ、女のためだな。

という言葉を聞いて、愛自身も、多分そうなんだろうな、と思っているだけだ。

「一緒の高校でもなくて、全然会えないんでしょ。諦めたらいいのに」

「ま、愛さんには関係ないでしょ、てトコだな」

 ふざけるように言って、ハハハと笑う。さっきはヒロが、そうだと言って聞かなかったから、お前も聞くなということらしい。

「もうしばらく待てよ。それについても、ハルの試合も。あとそれを叶えたいなら、俺の応援をしろ」

 ヒロは言うだけ言って、鏡の前までシャドーを始めた。もう話す気はないようだった。

(意味わかんない。二人とも、教えてくれないし)

 聞くことだけは諦めて、愛も自分の練習に戻った。いずれ、ハルに勝つための練習に。


 ハルが砂袋の間から出てきて、縛っていた髪を解くと、ヒロも練習を終えた。シャドーの後、サンドバッグでフォームを確認。二重のチェックではあるが、筋トレも格闘技も、それほどフォームは重要なのだと、ヒロもハルもわかっている。

 二人揃ってストレッチをしながら、栄養補給をしていく。プロテイン、BCAA、バナナ……等々。

 互いのサンドバッグの音や、筋肉を誉め合っていると、愛は

「それについてはマジドン引きです!」

と言って、離れていってしまった。仕方ないね。

「愛が砂袋の間を、恋する乙女の目で見てたぜ」

 思いに応えてあげてもいいんじゃねぇのと、ヒロは悪戯っぽく笑う。

「その台詞、間宮道場で名前だけ変えて返そうか?」

 ハルもからかうように、笑って言う。それだけで、ヒロは何も言えなくなった。ストレッチに集中したいから話さない、とでも言うように体勢を変え、別の部位を伸ばす。

 ハルも無言でストレッチに集中した。練習はまだ仕上げが残っており、時間も限られているのだ。

 終えて、サポーターの装着を確認して、学ランを着直す。二人揃って、頭を下げてジムを出る。目的地は、夏校ーー私立夏の浦高校だ。夏校は、愛も通う武道優遇の高校で、筋肉の春校、技術の夏校と並べて呼ばれている。

 春校からは近くはないが、両校の中間にある中町ジムからは、近い。そういう場所にある。


 比武には、序列という名でランキングが毎朝十時に出る。国営の事業なので、高校ごとだけでは区切られない。つまり、最も広い枠組みのランキングは、全国ランキングである。

 枠組みごとにも、序列は公表されている。

 ○校内序列

 ×年生序列

 △地区序列

 □県内ランキング

 といった風に。全国では参考にしづらいため、この四つを組み合わせたものが、注目される。

 また、サポーターにはチップが埋め込まれており、拳や蹴りの速度、威力を計測する。生徒が持つ携帯端末へと、それぞれデータとして送信される。

 各々が自身の勝敗数、勝率、対戦者、自分のパンチや蹴りの速度や威力、耐久力が閲覧できる。比武を行ったことがある対戦者なら、一ヶ月の間、相手がどこで何度比武で戦かったか、結果はどうだったかを知ることができる。

 また、お互いが承認してフレンドとして登録することで、一ヶ月という期限なしで、それらの結果を知ることができ、チャット機能も使うことができるようになる。格闘をコミュニケーションとした、国営のSNSだった。

 知りたい相手のデータは、課金すれば拳や蹴りのステータス等も、一ヶ月の期限有りで知ることができる。



ヒロ(Hiro)


 Class 『S』

  春の宮高校序列 七位

  四季区序列 二十六位

  四季区二年生序列 十四位

  N県内序列 五十位

  N県内二年生序列 二十一位


 ATK 『S』

 Speed 『B』

 Tec 『D』

   拳 Rank『S+』

    Speed B

    Power S++

   蹴り Rank 『B』

    Speed C

    Power B+

 他 『B』

 耐久 『B』

 スタミナ 『?』


  戦績

   戦歴 「非公開」戦

   勝利数 「非公開」勝

   勝率 「非公開」%


と、いうように。

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