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右の拳と左ミドル 【筋トレとバトルの小説】  作者: 松明ノ音
第一話 始める春の初め
13/55

初めてのベンチプレス

一応調べて書きましたが、参考にはならないレベルです。

やる時は、各々調べてやってつかぁさいm(__)m

 マナブは、小さな長椅子のようなものに、寝転がった。頭上というか目の前には、長い鉄の棒が、マナブの顔の左右にある支柱で支えられている。

 長椅子はベンチといい、鉄棒はバーベルというそうだ。支柱は、パワーラック。

「今からやるのは、筋トレの花形『ベンチプレス』だ」

 マナブの顔の右側にハルが立ち、説明をしていた。

「5kg」と書かれた円形の重りを二つ持ってきて、バーベルに着けた。

「とりあえず、棒だけで10kgある。20kgでやってみるか」

 ヒロは一人言のように告げ、ベンチに横になるよう言った。横になったマナブを上下に動かしたり、バーベルの重量をロックして、調整される。

「これで鍛えられるのは、大胸筋、三角筋、上腕二・三頭筋と前腕筋だな」

 言いながら、ヒロはマナブの胸、肩、二の腕、腕を軽く叩いていく。ここを今から鍛える、ここを意識しろと言って。

「いいか? 肩甲骨ーー両肩から背中寄りに、変な形の骨があるだろ? それを背中の真ん中に寄せろ」

 マナブは、一度背中を浮かせて、胸を張るようにして寄せた。

「そうだ。少し肩甲骨は下に引け。次は足、そうだな、その位置で足の裏を地面にぴったりつけろ。そのままバーベルに手をかけてみろ。親指だけ下から、他の指は上から握れよ」

 マナブは付いていくのが精一杯だが、何とか言われた通りにできた。

「バーベルはちょうど首の上にくるように、よし。そのまま両手の間隔を肩幅の1.5倍に広げろ。これで……、完成だ。携帯貸せ」

 ヒロは、隅に置いていたマナブの携帯を取ると、写真を角度を変えて数枚撮った。

「このフォームを忘れるな、て言っても無理だろうから、写真で撮っておく。しばらくは、ベンチプレス始める前には、一回確認してやれよ」

 マナブは、頷く。自分でも不思議だったが、フォームを教えてもらいながら「早くやってみたい」という衝動に駆られていた。

「よし、やってみろ。一度ラックから浮かせて、首の上まで下ろせ。ゆっくり下ろせよ」

 ヒロは言いながら、マナブの頭の近くへと移動した。マナブは声を出さずに頷いてラックからバーベルを一度持ち上げ、首へと下ろし始めた。

(……重い!)

 20kgの重さを持ち上げるなんて、経験したことがなかった。何とか下ろしていく。首の上に重いものがあることに、恐怖を感じる。

 下ろしていく時間は長く感じたが、実際には三秒も経っていないだろう。「よし、一気に上げてみろ」

 ヒロの声の意味が、一瞬わからなくなる。

(持ち上げる? これを?)

 マナブは動かし方をわからずに始めたわけではなかった。下げて持ち上げるとも言われていたし、どこかで見たことがあった。

 しかし、想像以上に持ち上げるという動作は、下げた状態からは困難なことだと思えたのだ。下ろすのは重力に従えば、できた。しかし、ここから自分の力だけで、重力に逆らって持ち上げるのだ。

(でも、やってみるしかない)

 下ろした状態で維持しているのも、辛くなってきたのだ。

「っくぅ!」

 思わず声が出て、少しバーベルが浮く。しかし、その少しから上には上がらない。

「ぅ、くっ」

 マナブは、無意識に声が出ていた。それでも無理矢理に持ち上げてみようとすると、右手だけが少し持ち上がり、それを追って左手を少し上げた。それで、さらにもう少し持ち上がった。

(でも、これ以上は無理ーー!)

 そう思っていると、急にバーベルの重さが軽くなった。今更マナブは、自分が目を閉じていたことを気付いた。

 目を開けると、そこには右手でバーベルを掴むヒロがいた。

「ちょっと重かったな」

 そう、ヒロはマナブに笑いかけた。

「ごめんなさい」

 息を軽く吐いて、マナブはヒロに謝る。

「ははっ、謝る必要はねぇよ。今のは、スタート地点を確かめただけだ」

「そう、なんですか?」

 マナブは、ヒロの言っている意味はよくわからなかったが、とりあえず応えた。

「そうそ、とりあえず重量を両方5kgから2.5㎏に変えるぞ」

 慣れた動作でヒロは喋りながら固定を外し、重量を変えていく。

「あぁ、言い忘れてたけど、さっき右手だけ先に持ち上げて、その後に左手を上げただろ?」

「はい」

「あれはよくない。フォームと適正な重量ってのは、ずっと大事にしろよ? 効果は半減するし、何より怪我につながりやすい」

 言う間に、重量を付け終わった。

「じゃ、再開だ」

 笑顔でヒロに言われると、マナブも笑って、はい、と言えた。

 さっきと同じように、マナブはバーベルを下ろしていった。今度は、さっきより危機感を感じない。危なければさっきと同じように、ヒロが止めてくれるとも、信じられる。

「そこだ、一気に上げろ」

 上げていく。一気に上げるつもりでも、スッとは上がらない。

(でも、上がる)

 持ち上げていく。なぜかマナブは、背中にゾクゾクとした快感が走るのを感じた。さっき持ち上げられなかったのが、悔しかったのだと思う。

「そこだ。下ろせ」

 肘が伸びきる前に、ヒロの声が聞こえた。達成感を感じる前に次に入ったことを、少し寂しく感じたが、続けていく。

 マナブはバーベルをゆっくりと下げて、またヒロの合図で気持ちだけは一気に上げる。

 また、伸びきる前に下げる。合図で上げる。

 四回持ち上げた時点で、マナブは再び、

(持ち上げられない)

と思った。ヒロは心を読んだように、

「まだ行けるぞ! もう一回だ!」

と声をかけた。

 再び、マナブは目を閉じていた。歯も食いしばっている。

 何とか、上げた。しかしまた「よし、下げろ」の声が聞こえる。下げる。上げる。

 何とか、7回を持ち上げた。

「最後だ。もう一回下げろ」

 ヒロの声で、絶望したような、希望を持つような台詞が聞こえる。

(最後、やってみせる……!)

 マナブは、最後という言葉に希望を持って、再びゆっくりとバーベルを下ろす。

「よっしゃ! 上げろ!」

 一気に上げた。必死だったからか、今度は感覚だけじゃなく、スッと持ち上がった。

「やるじゃねぇか! よくやった!」

 マナブが持ち上げた瞬間に、ヒロはバーベルを取り上げていた。

 嬉しそうに笑って言うヒロを見て、マナブも喜びを実感し、

「ありがとうございます」

と言っていた。

「フォームはまずまずだった。完全に崩れたことはなかったが、キツくなってきた時、やっぱり少しズレてきたな」

「はい。自分でもわかりました」

 マナブは、寝ていた状態から上半身を起こして応えた。ヒロは、笑って続ける。

「初めてにしては、上出来だぜ」

「ありがとうございます。なにか、自分でも『やった』って気がして、すごく嬉しいです」

「そうか。それも、筋トレの醍醐味の一つだな」

 笑うヒロを見ていると、マナブも何だか嬉しくなって、笑った。

 マナブは達成感と、心地よい筋肉の疲れを感じていた。ベンチプレスを始める前に、ヒロに叩かれながら説明された、胸と腕の筋肉が特に感じている。

 ーーピピッ

 突然音が鳴った。音源はヒロが左手に持っていたストップウォッチだった。

「お、一分経ったな。それじゃ、2セット目行くか」

 終わったと思っていたマナブは、心の中で絶望した。

(あれもう終わったんじゃなかったの? でもそんな簡単なハズもないよね、でもボクさっきでけっこう限界だったと思うんだけど、でもヒロ先輩が普通にやれって言ってるから、当たり前のことなのかな? でもこれだけスゴい体の筋肉のヒロ先輩の普通って普通じゃないんじゃ?)

 頭の中では色々と考えたが、体は勝手にさっきと同じように寝転がった。

 マナブ自身、この状態でどれだけやれるか? というのも気になった。自分の体に、自分に期待したのだ。

「よし、ゆっくり下げろ。今度は下げながら息を吸って、下げたところで一秒だけ息を止めろ。上げる時は一気に息を吐きながら、上げてみろ」

 マナブはさっきと同じように、無言で力強く頷いた。

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