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右の拳と左ミドル 【筋トレとバトルの小説】  作者: 松明ノ音
第一話 始める春の初め
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初めての動的ストレッチ

一応調べて書きましたが、参考にはならないレベルです。

やる時は、各々調べてやってつかぁさいm(__)m


 筋トレ館は、きれいだった。

 金かかってそうっス、というユウダイをマナブは笑ったが、同感だった。新築ではないだろうに、白い壁は汚れておらず、廊下もきれいなものだった。ダンベル、バーベルという名前が何を指すのかは想像がついたけれど、他は名前どころか、見ても使い方さえ想像できなかった。

「おう、来たか」

 マナブとユウダイは、すでに筋トレ館に来ていた、半袖短パンのヒロハルの二人に迎えられた。

 ヒロは赤い髪に合う黒いTシャツで、灰色のパンツ。ハルは青いTシャツと黒い短パンだった。

 学ランから薄着になると、二人の体は尚更異常だった。ヒロの上半身は大きく厚すぎる逆三角形で、腕はマナブの体のどの部位より太かった。

 ハルの下半身も、太いことは分かっていたが、みっちりと筋肉が詰まっていることが改めて分かる。太腿が太すぎて、両足を揃える『気をつけ』はできないだろう。

 マナブとユウダイは、今日配られたばかりの体操着を早速着ている。マナブはユウダイを見て「締まっている」という感想を持った。

「じゃあまず、二人はどこを鍛えたいんだ?」

 訊ねるヒロに、ユウダイは、

「オレ、野球にも使えそうな筋肉が欲しいっス!」

 ユウダイがすぐに答えた。マナブは、抽象的でいいのかと安心して、思ったままのことを言った。

「……ボクは、自信が欲しいです」

 マナブの思ったままの言葉に、ヒロとハルは一瞬切ないように、眩しいように目を細めた。

「そっか。じゃあ、マナブは俺が見よう」

「ユウダイ君は僕が見るねー。下半身鍛えようか」

 マナブはヒロから教わり、ユウダイがハルから教わることになった。準備運動くらいは全員一緒にやろう、ということでマットのスペースに移動した。

 ユウダイが座り込んで、体を伸ばそうとしていると、

「ストップ」

とハルから声がかかった。ユウダイは不思議そうな顔で、振り返る。

「野球部では今まで、そういう風にやってたの?」

「えー、はいっス。声出しから始めて、ストレッチだったっス」

「そっかー。じゃあ今日は声出ししない分、ラジオ体操から始めようか」

 ラジオ体操? 厳しいトレーニングを予想していたマナブは、不思議な表情になった。

「うん。動的ストレッチってヤツだよ」

 マナブは初めて聞く言葉だった。ユウダイは、聞いたことがあるが、内容は知らないそうだ。



「体は温まってないと、あまり動かないってことはわかるよな?」

 ヒロが引き継ぐように言う。

 それは、わかる。運動部でなかったマナブにも、実感としてあった。

「筋肉も靱帯も、冷えた状態だと伸びにくいし、力も出せない。声出しとかで体を温めた後ならまだいいけど、冷たい状態で伸びにくい靱帯や筋肉を伸ばすってのは、あまりよくないんだ」

 なんとなく、よくなさそうってのはイメージつくだろ? そう問いかけられて、二人で無言で頷いた。

「じゃあどうすればいいかって言うと、

『冷えてるのを、止まって頑張って伸ばす』静的ストレッチの逆をやればいい。動的ストレッチは

『動いて温めながら、ゆったり伸ばす』んだよ」

 補足するように、ハルも口を出す。 

「キックボクシングとかやってるなら、軽いシャドーでもやって温めて、静的ストレッチでもいいと思うけどねー。野球だと、バット持たないで軽く素振りするとかでもいいと思うよ」



 ユウダイは「オスっス」と神妙な顔で答えた。

 じゃあ、と言ってハルは、マットコーナーの端に数台置いてあるラジカセの一つを取り、流し出した。

 自主的にラジオ体操なんてことをやるのは初めてで、少し可笑しいような気持ちになった。ただ、周りの生徒たちは普通に聞き流しているので、春校では普通のことなのだろう。四人で円をつくるようにして、懐かしい音楽を聞きながら体操を始めた。



 マナブは言われたように、体を温めることを意識しながら体を伸ばした。無理に伸ばそうとせず、動きの中で自然に伸びるところまで。その意識でやっていると「いいぞ」とヒロに笑顔で言われた。

 ラジオ体操で褒められるなんて、と照れくさい気持ちになったけれど、嬉しくもあった。顔も、赤くなるのを感じる。

 ラジオ体操を終えるとマナブは、体は汗が数粒流れる程度に温まった。そこから、ヒロに指示されて胸と背中、腕を温めたり、ゆっくり伸ばすストレッチをやった。

 両手を胸の前で合わせて押し合ったり、右手で左足の爪先を触った後で胸を張って反らして、左手で右足の爪先を触ったり、というものだった。

 ユウダイは、ハルに下半身を伸ばすストレッチを教わりながらやっていた。壁に片手をついて、宙に何度も脚を振り上げては下ろしている。



 ハルの太い脚が高く上がるのを見るのは、迫力だった。

「じゃ、お互いやっていくか」

 器具は鍛える部位ごとに分けて置いてあるらしく、ユウダイはハルに連れられて行った。

 若干の不安はあったが、ヒロハルが準備運動から体を大事にしていることがわかって、無理なことはさせられないという安心感も生まれていた。

 そして、安心するどころか油断していたことを、マナブは数十分後、後悔することになった。


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