目的地の入口 上
冬の屋上。夕日がすべてを、燃えるように赤く染めていた。
学校周辺の住宅地も、赤い。校舎もグラウンドも、赤い。屋上も、赤い。屋上に立つ四人もまた、赤く染められていた。
中央に立つのは、この春の宮高校の学長、春の宮一馬。この男は今、立会人としてここに立っている。その横に立つ少女は、沈痛な面持ちで、俯いていた。
「前を見ろ」
一馬の声に、少女はハッとしたように、顔を上げる。
「お前が見なくてどうする。儂以上に、お前が見なくては」
少女は一度左右に首を振ったが、覚悟を決めて正面を見据えた。この先に起こることを何一つ見逃すまいと、瞳に光を湛えて。
瞳の先には、二人の男が立っていた。
二人とも、異形である。
一人の姿は、異形の巨木だった。本来、根から数十メートルの高さまで太い幹を育む資質を持つ巨木が、土から出てすぐの部分で紐を縛られたかのように、足元から肩に上がるにつれ、異常に太くなっていく。
胸は、爆発しそうなまでにせり出ている。背中は大の男が三人は乗れそうなほど、広く厚い。肩は、ボーリング玉を二つ置いたかのようだ。腕は、巨木の枝である。枝自体が、太くぎっしりと年輪の詰まった幹であるような、巨木の枝である。
巨木は、学ランのボタンをすべて外している。腹部に余分な肉がないためか、学ランの下部分はヒラヒラと揺れている。しかし、巨木の上半身を支える腹直筋、腹斜筋も下半身も、頼りなくはない。支えることはおろか、さらに上半身の力を増幅させるほどに、太い。
巨木の男の短い赤髪は、揺れない。髪の毛にまで神経が通っているかのように、硬直して天を突いていた。
巨木の男は、己の正面に立つ男を、大きな燃える瞳で睨んでいる。
睨む先の男の目は細い糸目で、瞳から感情は窺えない。しかし顔つきは、覚悟を決めた男の顔であった。唇を固く結び、眉間に力が入っている。長い茶髪は、風が通る度に揺れている。こちらは、学ランの第一ボタンだけを外していた。
男の体は、滝のようであった。上流から流れ続け、滝壺付近で最も太く、水流が強くなる、巨大な滝である。男の太股は爆発する鉄柱のように中央で膨らみ、太く固く、内部に燃えるようなエネルギーを孕んでいる。ふくらはぎと脛は、巨大な獣のそれである。複数の筋肉群が人間では発達しえないほど、ボコボコと隆起している。靴の大きさが異常である。指先の筋肉まで肥大化しており、それぞれの指が立つだけではパワーを持て余し、今か今かと踏み込もうと猛っている。足背(足の表)は、ビリヤード玉が入ったように丸い。何度も蹴り、蹴り、蹴り、蹴り、腫れさえも固い肉体の一部になった足である。足の爪は、最初からなかったように存在しない。足首さえ太く、地震があっても揺れさえしないのではないかと思えるほどの、下半身であった。
滝の中流である腹部も、下流と繋がるように太かった。上半身全体の太さは巨木に劣るも、腹部の太さは、滝の男の方が勝る。