08
クラレンスとザカリーが飛竜の島へと旅立った。
ヴァレアは病み上がりということで留守番である。
ザカリーの腰には最強鉱物エメラインを3日かけて魔力で加工して出来た剣が備わっていてそれを自慢された。
薄い緑―白緑がかった、まるで宝石の様な刃だった。
向こう側が透けて見えるその刃にヴァレアは思わず見入ってしまったほどだ。
何故か勝ち誇った顔をしていたザカリーはクラレンスに小突かれて連れていかれたが。
1日2日で帰ってくるとは思っていないがさすがに4日も帰ってこないとつまらn・・・心配である。
ぼんやりと広間のバルコニーから外を眺めながらヴァレアは深く息を吐いた。
「幸せが逃げちゃうよー」
可愛らしい声が聞こえてくるが主が分かっているのかヴァレアは振り向かない。
にひょにひょと笑いながら15歳の人間の少女がヴァレアの横に立った。
「ご機嫌麗しゅう、マリッサ嬢」
嫌味っぽく言葉を返すが変わらず楽しそうにマリッサは笑顔を浮かべていた。
このマリッサという少女はザカリーとは違った形で7年前にこのキッパール王国にやってきた。
時々、クラレンスが魔獣を召喚するのだがこれは世界中にいる魔獣を呼び出すものである。
それは何かの封印などされてない限りはどこにいる魔獣が召喚されるかはランダムである。
たまたま、召喚した魔獣の中から丸呑みされていた少女がでてきて、その少女がまだ息があったものだから保護した、ということである。
8歳のマリッサはいわゆる孤児というものであった。
村の路地で孤児が何人か肩を寄せて過ごしていたのだが、何者かに攫われたのだ。
奴隷に、愛玩具に、臓器売買にと人の扱いはされないという。
マリッサは見世物小屋に売られ、そこで魔獣に丸呑みされたのだといった。
そしてあとはこの通りである。
帰る場所もなければ人間の大陸まで帰る為に必要な魔力もない、そんなマリッサに正直、クラレンスは無関心だったのだが、3歳のヴァレアは幼くも彼女の境遇に心を痛めどうにかしてあげたいと奮闘した。
そこに丁度、娘が嫁に行ってしまい寂しい思いをしていた屋敷の料理人夫婦―勿論、魔族である―がいたので養女として身請けしてくれるようお願いし、そして快く夫婦はマリッサを引き取り育ててくれている。
そんな過去があるにもかかわらず明朗快活に育ったのだ。
それこそヴァレアがうんざりするくらいに。
「ほらほら拗ねてないで」
ぐりぐりと頬を指で擦ってくるのでヴァレアは眉を顰める。
構わずぐりぐり押し付けていた指をふと離したかと思うとマリッサは三日月のように口を変えて笑った。
「そうだ、街へ行こう!」
「は?!」
突拍子もない提案に更に眉を顰めたが、ヴァレアの腕を取るとマリッサは強引に引っ張っていった。