三題噺(コーヒーメーカー ジャスミン ロウソク)
ロウソクの炎が揺らめく。
一つのロウソクを囲む様に何人かの男女が座っている。
ロウソクの淡い光では部屋を照らしきれずそれが男か女か分かるが顔の識別は難しかった。
「次、99話目を誰が話す?」
ひとりの男性が聞くと一人の女が手を上げた。
「私がやるわ」
他のものから批判はなく手を上げた女も無言は肯定ととって話し出した。
「これは、私の街であった話」
あるカップルがいたの。
二人は少し離れた場所に暮らしていて中々会うことが出来なかったんだって。
会いたいな……なんて。
そう思ってた時、女へ彼からメールが届いたの。
会いたい。
女は飛び跳ねるくらい喜んだそうよ。
彼も同じ気持ちだったんだって。
それから女と彼は私の街で会うことになったそう。
ちょうど私の街は中間地点で交通の便も良かったんだって。
日毎に会う場所を変えてたんだけど、ある日とあるお店の前で二人はいつものように話してたんだって。
もう、シャッターも閉まってたような時間で夜もだいぶ更けた時間帯。
そろそろ帰ろうかなと時計を見た時、お店のシャッターが少し開いてることに気づいたの。
なんでだろう?開いてたっけ?
そんなことを考えていると彼がいきなり倒れたの。
大丈夫?と彼を見た時女は血の気が引くと言うのを初めて感じたと言うわ。
彼の足首が切れてたの。
痛がる彼に近づこうとした時、今度はカレの体は二つに切れてしまったらしいわ。
彼女は訳分からなかったけど切られる時何かがシャッターの向こうに消えたのを見たそうよ。
思わず叫びそうになったけどガラガラと音を立ててゆっくり開いていシャッターの音で我に帰ってね。
このまま開いたら彼をこうしたやつが来て私を……。
そう思うと彼女は踵を返して逃げたらしいの。
翌日彼の死体は少し離れた河川敷で見つかったの。
で、彼女の話でそのお店の主人に話を聴くとあっけらかんとした感じでこう答えたらしい。
だって、夜中にうるさかったから。
誰でもちょっとしたことで何をするか分からない。
そんな話。
そう締めて女はロウソクの火を吹き消した。
また暗闇が部屋を覆う。
「一旦休憩しよう。」
そう誰かが切り出した。
賛同の声が上がり各々部屋を出る。
その中の一人、比較的幼い女の子は給湯室に向かった。
眠気覚ましのコーヒーを入れるためだ。
コポコポとコーヒーメーカーが音を立て始めた頃、ジャスミンのいい臭いがする女の人が入ってきた。
暗いから、識別出来ないがさっき話した女性かな?と思ったので話題を振ってみた。
「あの話実話ですか?」
「そうらしいわよ。」
女性は給湯室の戸棚を開けて自分のお茶を探しているようだ。
「まぁ、私も聞いた話だけど」
「そうなんですか。」
そう区切ってふと、疑問に思ったことを聞く。
「その話ニュースになりました?」
「なんで?」
ちょっと女性の目つきが変わった気がする。
女の子は気にせず話を続けた。
「いや、警察の動向とか何で知ったのかな?って」
そう聞くと女性はニコッと笑う。
「それはそうよ。」
「だって、私がその殺した店主の妻だもの」
お題を下さった方々お粗末さまでした