第70話「さすおに」
「……あれ?」
「いや、罠に決まっているでしょ!」ねとりは警戒して距離を取っている。
「いつでもルール追加可能です」法家も待ち構えていてくれるが、その後も会長の動きはない。
いくらなんでも長い。たかしはインリに目をやり、一回、引き寄せあうイマジネを解かせる。
そして距離を取って、恐る恐る会長に指示を出してみた。
「ちょっと壁際まで離れて」
すると会長は指示した通りの動きを見せた。そのまま次の指示を待つように動かない。
「……ん?」
さすがに上手くいきすぎていると思い、一回パコにメールを消去させてみる。
すると、まるで何事もなかったかのように会長は喋りを再開した。
「さあ、来るなら来い! この学園の管理こそ、我が使命なのだよ!」
「お、おう……?」
これは高度なギャグか? いわゆるシリアスな笑いというやつなのだろうか。
「もしかして……本人、気づいていないんじゃない?」とパコ。
「いやいや、さすがにそんなはずは」
「いいか! 他の連中と違い、素直に屈する私ではない! 私は――」
もう一回、今度は別のメールを送らせた。
『家に帰れ』
と、そのメールが刺さった瞬間、会長は素直に従って教室の外へと出ていき、そのまま引き返してくる様子はなかった。
しんとした教室で、たかしは茫然とつぶやく。
「これは……もしかして勝ったのか?」
「す、すごいですよ!」と法家が両手を上げてガッツポーズをする。
「強くなりすぎたんじゃない?」パコも笑っている。
「ゲロシャブ、やるぅ」
インリに続いて、ねとりもグッジョブのポーズ。
「はっはっは、それでこそ、あたしのご主人!」
さすがの会長とはいえ、イマジネ四人持ちには勝てなかったということか。
ボロボロになりつつも、たかしは勝利の味を噛みしめていた。
と、パチパチという拍手の音が聞こえる。
それは、ねとりたちがいたのとは反対の方向。たかしは慌てて振り返る。
「おまえは……!」
そこにいたのは、副会長でも鬼姫でもなく――




