第67話「清純女子×夏休み=」
戦いが終わり、たかしは獅子王に頭を下げる。
「巻き込んで悪かった」
「別に。オレが勝手に混ざっただけだ。退屈していたからちょうどいい」
獅子王は特に気にした様子も見せない。
たかしは少し様子をうかがうように言葉を吐く。
「それで、パコのことなんだけど……」
パコの所有権は現在、獅子王に移っている。いや、元に戻ったと言うべきか。
このままパコを連れて帰ってしまうのか、獅子王の真意を知りたかった。
「あの、私……」パコ本人は何を言っていいのかわからない表情をしている。
獅子王はパコを眺めた後、
「コイツ、もうしばらく預けておいていいか?」
獅子王の言葉に、パコは意外そうに顔を上げた。
「いいの?」
「背景に流れてる、もう少しここにいたいって」
「そ、そんなこと……」
「別に見なくてもわかる。そいつらと一緒にいるのが楽しいんだろ? じゃなきゃ、あんな風に相手に食ってかかるようなマネはしないだろうが」
「……ごめんなさい」
「すっかり生意気になりやがって」
苦笑いする獅子王に、たかしは礼を言う。
「ありがとな」
「あくまでも預けるだけだ。女に困ったら返してもらう」
ねとりが優しくキスをし、パコは再び、たかしたちの元に持ってきた。
「うわあああん、パコちゃん、おかえりー」ねとりが抱きついたまま、彼女を離そうとしない。
「わーい、インリもやるー」「お疲れさまでした」
インリも法家も、パコの帰還を喜んでいるようだった。
「みんな……大げさ……(好き好き超好き、離れたくない)」
獅子王はその様子を、どこか満足げに見つめる。
「じゃあ、これで貸し借りなしだ」
手を振って立ち去ろうとする獅子王の元に、一人の女子が駆け寄ってきた。
「もう、何してたのー。獅子王君おそいー」
それは同じクラスの音鳴だった。いつの間にか、髪色が派手になり、スカートも短くなっていた。
「悪い、色々あってな」
「ね、ね、今日家行っていい?」
「ああ、親もいないし、別に構わないが」
そのまま二人はイチャイチャして去っていった。
背中を見送って、ねとりが一言。
「もしかしてあの人、パコちゃんがいたら邪魔だから――」
「それ以上言わないで(死にたい)」
パコの目が死んでいたが、気にしないことにしておこう。
たかしは気を取り直して、後ろにいた残り一人の方を向く。
「そうそう、隅田さんもありがとうございました」
隅田は気だるそうに首筋に手をやった。
「やれやれ、まさかこんなにも早く呼び出されることになるとは。だがこれでお互い約束は果たした。平和な学園生活を送るためにも、もう二度と関わってこないことを祈るまでだ」
「三五七さんもありがとな」
「べっ、別に! 約束だから力使ってあげたまでで……私はお金さえもらえればいいし!」
「じゃあ、お金払うんで、もっと凄いことを」
「やめとけ」ねとりのツッコミでそれ以上は何も言えなかった。
「けどアンタ、そんな呑気なこと言ってる場合?」
三五七が呆れたように呟く。
「四天王全部倒して……よりにもよって、一番厄介な相手を引っぱり出したみたいね」
「え?」
どこからか眼光を感じる。頭のてっぺんから見下ろされるような、圧倒的なオーラ。
と、教室の一角に人影があるのに気付いた。
窓辺に一人立ち、こちらを見つめていたのは――世良鬼姫だった。
「やっぱり鬼姫が……」
すると隅田が首を振る。
「そっちじゃない」
「え?」視線をさらに上にやると、屋上に別の人影があった。
後光が差すような形で、その人影はこちらの様子を見下ろしている。
「あれが俺たち、主人公同盟のボスだ」
隅田はそのまま去る。
「これ以上、巻き込まれるのは御免だ」
「せいぜい退学にならないようにすることね」三五七もその場から消える。
たかしは唖然としていた。それがあまりにも意外な人物だったからだ。
屋上からたかしを見下ろす影、それは――




