第61話「不様だなァ、底辺ッ!」
ヤバイ。ゾクっという寒気がした。
せめて不来方と龍ヶ崎が分離できればと考えていた。そのためにあらゆる手は尽くした。
だが策略は全部読まれ、たかしは不来方に捕まっている。さらにイマジネまで封じられた。
どうする。どうすれば。
打開策を考えようとするが、それすらも読まれているような恐怖感があった。
と、たかしを捕まえていた、不来方の手の力が強まる。
「ぐああああっ!」
痛みで考えるスキすら与えない気か。抵抗もむなしく、全身の力が抜けていく。
意識を失う寸前で、たかしはそのまま投げ捨てられてしまった。
ヤバイ、このまま気を失ったら、イマジネもそのまま消えてしまう。
「不様だなァ、底辺ッ」
歩み寄ってきた龍ヶ崎が、おもむろに胸を蹴りつけてきた。
「……ッ!?」声にならない声が響く。
「これで本当にアバラいったろ?」
「ちょ、やめなさいよ!」「やりすぎ!」
ねとりたちの抗議も遠く、脂汗が流れ出る。動けない。呼吸すらできない。
龍ヶ崎が無理やり体を引き起こし、耳元で囁いてきた。
「もしかして、自分が強くなったとでも勘違いしてたんじゃないのかね?」
言われてハッとする。正直思っていた。
イマジネ使いを倒して、自分も結構やるじゃんと思っていた。
だが、よくよく考えたら、自分には何がある?
不来方には身体能力で圧倒的にかなわない。
生まれ持った長身。一日も休むことなく何時間ものトレーニングを続け、あの肉体は作られたのだろう。
龍ヶ崎には戦術でも二手三手先が読まれる。
プロになるような連中は、天才の集まりだと聞く。
その中でもさらなる天才しか勝利は許されない。そんな世界に奴はいる。
「努力、根性でどうにかなると思っていたか? 努力は人を裏切らない。人間、一つくらいとりえがあって、それを武器にすれば、どんな奴らとも戦えると思っていたか?」
龍ヶ崎は続ける。
「いいか? 才能ってのは、人智の及ばないところに存在する。埋められない差は確実に存在するんだ。たとえ底辺連中が同じ量の努力をしても、僕たちには決して届かない。努力はな、人を裏切るんだよ」
いつから自分の力で勝ってきたと思っていた。
イマジネがいなければ、何もできないのに。
痛い。悔しい。切ったのか、口の中に血の味が広がっていた。




