第59話「逃げるは恥だが、いきり立つ」
「よーし、やってやるよ。簡単に片付けてやるからな。二人とも後悔するなよ!」
そう言いつつ視界の端で逃げ道を探す。
「いくぞ、とっておきの――」
言いかけて一気に反対方向にダッシュ。
意表を突かれたのか、二人とも追ってこない。
こういうときは逃げるに限る。しばし時間を稼ぐんだ。
と、いきなり何かにつまずき、思いっきりコケた。
「何やってんの!(バカ!)」と叱るパコ。
振り返ると足元にロープが絡まっている。完全に罠が仕掛けられていた。
「僕が戦いに来たということは、勝ちの道筋が見えたってことだ」
龍ヶ崎がゆっくりと歩み寄ってくる。
「一般的に棋士の仕事は対局だと思われている。だがあれは、あくまでも成果発表の場。
棋士は、人生の九割は対戦相手の研究に費やしている。研究九割、対局一割。
貴様の行動観察から、思考パターンは読めた。
まず困難が立ちふさがると、貴様は相手を見ようとするクセがある。
逃げて時間を稼ごうとするのは明白だ」
たかしは絡まったロープをほどき、なんとか立ちあがる。
再び距離を取ろうと、半歩下がった瞬間。
「ウオオオオオオ!」
不来方が叫び声をあげながら突進してきた。
そのまま力でねじ伏せられ、壁に押し付けられる。
「ご主人!」ねとりが悲鳴をあげる。
「筋肉キャラのくせに……速すぎだろ……」
「ハッハッハ、どうした? これで終わりか?」
楽しそうに笑う不来方に、たかしも笑みを返す。
「ああ……終わりだよ!」
懐から取り出したのは、秘密兵器スタンガン。
そのまま不来方の腹部にバチンという電撃をくらわせた。
「がッ!」不来方は身をビクンとのけぞらせる。
「やった!」法家がガッツポーズ。
前に八木沼と戦ったとき、女子生徒が持っていたのを預かって、
そのまま護身用に持ち歩いていたのだ。
力で勝てない相手が出るのはわかりきっていたこと。
「逃げられればベストだったが、懐に飛び込んでくれて助かったぜ、脳筋先輩」
だが不来方はすぐに顔をあげ、ニヤリと白い歯を見せた。




