第58話「3月か4月くらいのライオン」
細身でメガネの男と、氷のように冷たい視線を見せる女。二人とも和服に身を包んでいる。
女が懐から扇子を取り出すと、それを開き口元を隠して呟いた。
「陣形『金無双』」
「誰だ!」
たかしの問いに、メガネの男は冷たい笑みを浮かべる。
「フッ、底辺が。そう簡単に、自ら正体を明かす奴が――」
「奴も四天王の一人、龍ヶ崎一手だ。後ろにいるのが奴のイマジネ、御絶望代。
ちなみに彼女は『すべてのイマジネ攻撃を完全無効化』できる」
「出たー。絶対いつか出ると思ってたやつ!」
不来方の説明に、たかしは身をのけぞらせる。
和服メガネの男、龍ヶ崎一手。そういえば名前だけは知ってる。
確か、若干十五歳で将棋プロ入りした期待の新星。
最近は苦戦しているらしいが、ちょっと前はネットでもちょくちょく名前を見かけていた。
不来方学に龍ヶ崎一手。いつも朝礼で表彰されるタイプの二人。
よく見ると、御絶という女の周りを、巨大な駒が浮かんでクルクル回っていた。
あの駒を操って、パコの矢を防御をしたのか。
攻撃の無効化といっても、どこまでが無効なのかはわからない。結局、戦いながら探るしかない。
少し動くと、不来方に突かれたところが痛む。
「くっ、アバラが何本かいったか……」
「そこ、ほとんど腰でしょ」
ねとりとの他愛のない会話で、なんとかペースを取り戻す。
「昔から言ってみたかったんだよ」
「はいはい」
しかし、このままでは二対一か。
絶対攻撃の不来方に、絶対防御の龍ヶ崎。相手も本気で潰しに来たな。
たかしは軽く挑発する。
「二人がかりとか、恥ずかしくないのか?」
「ハッハッハ、四天王を二人も失ったんだ。
龍ヶ崎と話し合い、もう一気に行くしかないということになったのだ!」
龍ヶ崎も不来方に同調する。
「それが現時点で、最善の手と判断した」
「どんだけ臆病者だよ」
「ノー! 勝てばよかろーなのですヨ!」とオーウェン。
「おまえは応援してろ」
たかしは余裕ぶってみせるが、ハッキリ言って焦っていた。
絶対攻撃に絶対防御のイマジネ。
こっちにはイマジネが四人いるとはいえ、圧倒的不利な状況。
いったいどうする?
法家のルール改正で乗り切れるか?
いや、その前に不来方に気を失わされたらどうしようもない。
ただ、策を練るにも、とにかく時間がほしかった。




