第56話「そげぶ」
「あれ、鬼姫じゃないか? どうした?」
とにかくでかい、見上げるほど巨漢の男。
凝縮された筋繊維はパンパンで、今にも弾けそうな胸板をしていた。
その男は、なぜか肩に女の子を抱えていた。
女の子は外国人だろうか、金髪で、両手にポンポンを持ったチアリーダーの格好をしている。
健康的なふともも裏の肉筋が、チラチラ見えた。
なんだ、この不審な二人組は。
「……私は、クラスメイトに用がありまして」
鬼姫は特に不審がる様子もなく返事をする。
いやいや、肩の女にツッコめよ。
そういえば男の方は、教室の窓から、何度か見かけたことがある。
確かアメフト部のエースで、お堅い真面目系女子たちにも大変ウケが良かったはずだ。
「貴方はどうしてここに?」
鬼姫の問いに、大男はニカッと白い歯を見せて笑う。
「実は俺も、彼に用があるんだ」
そう言って男はこちらを見下ろしてきた。女の方も、こちらにウィンクをしてくる。
完全に嫌な予感がした。
「じゃあ私は行くわ。あまり問題を起こさないように」
鬼姫は、こちらに意味深な視線をやるとそのまま歩き去っていった。
その場には、たかしと大男たちだけが残される。
「よし、じゃあ行こうか!」
「えっ?」
よくわからぬまま、たかしは校庭へと連れて行かれる。
今日は校庭を使う部は少ないようだ。
空いていた一角にやってくると男は唐突に自己紹介を始めた。
「俺は主人公同盟、四天王の一人、不来方学だ。
コイツは俺のイマジネ、インビシブル・オーウェン」
やっぱり主人公同盟の一人だったか。
四天王のうち、犬神と隅田の二人を倒したので、そろそろ来ると思っていた。
うんざりするたかしに、チアガールのインなんとかオーウェンが笑顔でポンポンを振ってくれた。
「よろしくーですヨ」
少しカタコトの日本語が心地よかった。
「で、いったい何の御用で……」
不来方は笑いながら、たかしの肩をバシバシ叩く。
「ハッハッハ! わかってるだろう? キミは同盟にとって、危険人物と判断されたんだ」
「もう大人しくするんで、許してもらえませんか……」
「残念ながらもう遅い」
不来方は急にシリアスな表情を見せる。
「キミはあまりにイマジネを奪いすぎた。このままでは、我々の計画は根底から崩れ去る」
その気迫にゾクっとする。
同じ圧力を感じたのか、ねとりたちも途端に戦闘態勢に入った。
どうせ隅田との交換条件で、四天王とは戦わなければならない。やってやるしかないのか。
こちらのポーズを見て、不来方は百万ドルの笑顔を見せる。
「やる気になってくれたようだな……では始めるぞ!」




