第51話「五回戦 パイプッシュだ」
◆五回戦 先攻:隅田 後攻:横溝
隅田に迷いはなかった。
こっちはDカップで、相手の残りはAカップ。セットし、あとはオープンを待つだけだ。
「三五七……おまえを信じてよかった」
「ふ、フン! まあ、よくやった方よね?
少しなら褒めてあげてもいいわよ?」
「やれやれ、どうして素直に褒めてくれないのか。だが、こういう意地っ張りなところが、俺は嫌いではない」
隅田は首を振りながら、それでも自然に笑みがこぼれていた。
一方でたかしの方も、余裕の表情を見せている。
お互いが勝利を確信する不思議な空間。ついに最後の運命の扉が開いた。
「最終決戦、オープン!」
犬神の宣言に、相手側のカーテンが開く。スタンバイルームの中にいたのは。
「……誰だ、おまえ」
隅田は思わず絶句する。
そこにいたのは、隅田の知っている女の子ではなかった。
いや、そもそも女の子ですらない。
スタンバイエリアから出てきたのは、体重百キロは超えるであろう、巨漢の男だった。
一瞬、会場全体が唖然となる。
「……どういうことだ?」
声を絞り出す隅田とは対照的に、たかしは不敵な笑みを浮かべていた。
そして男の隣に立つと、たかしは堂々と宣言する。
「彼は相撲部の太田アツヒロ君。俺の……最後の切り札だ!」
「……ふざけているのか?」
「いいや、あくまでも出場していいのは『この学校の生徒だけ』としか決めていないはずだ。男がダメだとは一言も言っていない」
女の恰好をした法家が、お腹をめくりルールを確認している。
「本当だ……確かに『この学校の生徒だけ』としか書かれていません!
ペナルティが発動しないってことは、ルール上は問題ないみたいです!」
「そんな馬鹿な……」
絶望に陥りながらも、隅田は気を取り直す。
「し、しかし、こっちはDカップだ。男の胸で勝てるとでも――」
「おまえ、女友達ばっか多いタイプだろ?」
たかしはニヤリと微笑んだ。
「野郎との青春をないがしろにしてるから知らないんだ。
男の胸、それは時に女の胸をも超えるとな!」
「なん……だと……」
横溝は太田の服を脱がすと、後ろから両手でその胸をもみほぐし始めた。
はふんという太田の吐息が漏れる。
「相撲部で鍛えられた身体だからこそ、この肉感が出せるんだ。
この重み、この大きさ……彼こそが真の学園一の巨乳だ!」
犬神が慌てて彼のサイズを計りだす。
「間違いない、Eカップです!」
「ウソ、そんな……」三五七の頭がガクッと垂れた。
犬神はメガネを直すと、天に向かって手を挙げる。
「隅田Dカップ、横溝Eカップ。よってこの勝負、横溝の勝ち!」
犬神の宣言に、隅田は頭を抱え、首を振った。
「まさか、こんなことが……」
だがすぐに気を取り直し、たかしに尋ねる。
「いつの間にメンバーを入れ替えた? そっちの陣営は、Aカップが二人じゃなかったのか?」
「最初はそうしようと思ってたさ。けど、こっちに裏切り者が潜んでいたからな」
たかしはそう言って、チラッと後藤を見た。
「……気づいていたのか」
「ああ。どうせなら、それを利用して戦ってやろうと思ってな。
もちろん、Aカップの子は前もって抜いておいたぜ」
「なぜ彼女が裏切り者だとわかった?」
「それは、あんたのイマジネが巨乳だからだ」
そう言って横溝は三五七を指す。
「イマジネには使い手の欲望、願望が現れる。それは見た目も例外じゃない。どうやらあんたは、胸がでかい方がお好みのようだ。そんなあんたが、巨乳の後藤を放っておくわけがない。むしろ真っ先にキープすべきだ。そこまでしないのも逆に怪しいと思ってな。後藤に不審な動きがないか、見張ってたまでさ。そしたらあんたに連絡し始めたからさ、パコを使ってウソの情報を流させたってわけだ。ちゃんと、イマジネの使用は一回ってルールは守ったぜ?」
結局後藤は二重スパイとして使われたわけか。
「ちょっと審判! 勝負はどうなるのよ?」と三五七。
「戦績は二勝二敗一分け。勝敗数でいけば引き分けですね」
「となると……」
隅田はぽつりと呟く。
「獲得したメンバーのサイズ合計で勝負か」
勝負は、最後の判定決着までもつれ込んだ。




