第49話「四回戦 さわ・・・さわ・・・」
◆四回戦 先攻:横溝 後攻:隅田
一勝一敗一分けで迎えた第四戦。最後の勝負所。
たかしは『勝った』と思っているだろう。
だが隅田もまた勝利を確信していた。なぜなら戦う前から必勝の手を打っていたのだから。
話はメンバーを集めた時にさかのぼる。
※
「どういうこと?」
メンバーを集めた後、三五七が尋ねてきた。
「向こうは勝算があると踏んでメンバーを揃えてくるだろう。そこを利用させてもらう」
隅田は淡々と答える。
「この勝負は、特に六人目が重要なんだ。六人をスカウトすることによって、単純なABCDEカップでの勝負ではなくなる。戦力パターンはいくつか考えられる。たとえば三五七なら、どんなメンバー編成にする?」
「私なら大きさにものを言わせるわね。カップ布陣で言うなら、EEDCAって具合ね。
サイズが大きい分、勝ちやすいし、勝ちの価値が大きくなる」
「そうだな。そしてもうひとつは、相手の手を読んで対応してくるパターンだ。たとえば、さっきの布陣に対抗するなら、EDCAAってところか。Eカップを取るために、Aカップを二人入れる大胆な戦略だ。今回、向こうはその手を打ってきた」
「どうしてそれがわかるの?」
「そうするように仕向けたのさ。こっちにEカップが二人いるという、偽の情報を流してな」
そう言って隅田はケータイに届いたメールを見せる。
そこには、向こうが編成した五人のメンバーの名前が書かれていた。
「メールに書かれた全員を覚えているわけではない。顔が浮かぶのは数名だ。ただ、Aカップを二人入れてきたというのは確かな情報のようだ」
「その情報って誰から?」
「学園一の巨乳、後藤からさ」
隅田は壁に寄り掛かる。
「彼女には一番最初に電話をかけた。そうやって、あの巨乳軍団も集めてもらった。その後、向こうのチームに入って、こちらの偽の情報を流してもらうよう頼んでおいた。相手の手をある程度コントロールするつもりだったが、まさかここまで思い切った戦法を取ってくるとは。やれやれ、これだから怖いもの知らずは怖い」
「こっちの本当のメンバーはどうするの?」
「奇策には奇策を。向こうがAカップを二人入れてくるのなら……こっちはEカップを外し、Dカップを二人にする。DDCBAの布陣で、相手のAカップを無力化する」
「Eカップなしで戦うの!?」
「そこがポイントだ。この勝負で一番の痛手は何だと思う?」
「EカップがAカップに負けること?」
「それもあるが、もっと大きいのは、DカップがEカップに負けることだ」
隅田は淡々と言う。
「A、B、Cカップに勝てるDカップを失う上、相手のEカップがなくなったことにより、こちらのAカップが無効化されてしまう。戦力として、機会損失が大きいんだ」
「確かにそうね……」
「だから俺は一番最初に後藤を抑えた。巨乳集団に声をかけ、相手側にEカップが一人しか行かないように。あとは、スパイとして潜んでいる後藤が出てくるタイミングさえわかれば……」
「こっちのDカップに負けがない。さらにAカップで勝てる!
ポイントを抑えれば勝てるって、こういう意味だったのね」
「曲がりなりにも、イマジネ使いに勝ってきた相手だ。性格は合わないが、その能力は認めている。ルールを逸脱しない範囲で、いくつもの策を打っておいたというわけだ」
※
回想を終え、隅田は目の前の勝負に意識を戻す。
今のところ勝敗は、一勝一敗一分け。残り二戦。
まさか隠れ巨乳の発想はなかった。選択を間違えれば、いくらでも逆転されていた。
あとは、この第四戦目のカードの出し方次第。真の勝負はそこで決まる。
今まで隅田が出したカードは、Dカップ、Bカップ、Cカップ。
向こうはこっちにEカップが残っていると思っているだろう。
だが、それはフェイク。実際に残っているのは、AカップとDカップしかいない。
相手に残っているのは、AカップとEカップ。
つまりここで隅田が一勝した時点で、勝ちは確定なのだ。
さらにこっちには秘策があった。より確実に勝つための策。
そのためにここまで戦略を積み上げてきた。
「三五七、イマジネを使うぞ」
「オッケー」
三五七の力、それは『地獄の沙汰もカネ次第』。
単純に言えば確率操作。詳しく言えば、金で確率を買うというものである。
変動させる確率1%がいくら、といった相場があり、
そのレートは複雑な確率になるほど高くなっていく。
たとえば『ゲームに勝つ』なんて曖昧な指定の場合だと、
確率を1%あげるのに、十万円以上かかるだろう。
いくつもの要素が関わる勝負だと、総額いくらかかるかわからない。
逆に、確率が単純なものになるほどレートは下がる。
なのでここまで積み上げた。
横溝がEカップの後藤を出す確率が50%になるまで。
切り札ほど、あとに出したくなるもの。
こっちがAカップを使い切ってから出したかったはずだ。なので向こうも、ここまで引きずった。
ただそれは、隅田が上手く誘導してきたものだったのだ。
あとはその50%の確率を99%まで高めるだけだ。それで勝利は確実になる。
勝つとは、運否天賦に頼ることではない。勝つための布石を地道に積み上げること。
これが隅田が学んできた生き方だった。
最後のひと押し、発動。
「今回のレートは1%百円ね」
「じゃあ、99%まで頼む」
「はーい。合計四千九百円ね」
隅田は五千円を支払い、お釣りを百円受け取った。
今月苦しくなるが、資金分は他の四天王に飯でもおごってもらおう。
三五七がお札にキスをすると、お札は空中に姿を消した。
「はい、確率操作完了」
三五七が能力を発動し終えると同時に、向こうはカードをセットしたようだ。
奴の切り札、唯一手に入れられたEカップの後藤を。
「あとはこっちの番だ」
これでAカップを出せば勝てる。勝てるんだ。
女子を呼び込もうとした手がふと止まった。
視界に入った、たかしの目。その瞳の奥に、なんともいえない不気味さを感じたのだ。
いや、もう向こうにできることはない。
相手は99%の確率でEカップの後藤を出したはずだ。故にこっちがAカップを出せば勝てる。
……だが、もしかしたら。向こうが1%の確率でAカップを出してきたとしたら。
第四戦はAカップ対Aカップで同点となるが、最後の勝負でDカップ対Eカップになり、こちらが負ける。
果たして奴は、1%の男なのか……。




