第37話「やれやれ、どうして俺ばかりが、こう事件に巻き込まれるのだ」
放課後。
さっさと帰ろうと、下駄箱を開けると、中には手紙が置いてあった。
「これ、もしかして……」
「うっは! ラブレター?」ねとりはワクワクしている。
たかしは周りをキョロキョロしながら封を開ける。
書かれていたのはシンプルな一言。
『これ以上、イマジネに手を出すな』
予想通りの脅迫状だった。
「たいしたラブレターだこと(カミソリくらい入れといてよ)」
パコが呆れ気味に吐き捨てた。
「わーい、今日のゲロシャブ、モテモテぇ」
インリの皮肉に返事をする気力もない。
「ずいぶんと嫌われたものですねえ……」
同情してくれたのは法家だけだ。そのふとももに、顔をうずめてあげたい。
しかし相手は、そんなにたかしに動いてほしくないのか。
差出人がまだ近くにいないか、辺りを探っていると、不審な男が目に入った。
男は独り言を言いながら、こっちへ近づいてくる。
「やれやれ。どうして俺ばかりがこんな事件に巻き込まれるのだ。決して望んだわけではない。だが望む望まないを飛び越えて、トラブルというやつは、まるで神成さんの家に飛び込んでくる野球ボールのように、窓ガラスという平穏をぶち壊しにくるのだ。もし神がいるとすれば、俺はそいつの顔面に全力でパンチを打ち込んでやりたい」
「なんか来たぞ」
たかしは警戒を強める。
独り言男の隣には、ここの学校とは違う制服姿の女がいた。
「アンタたちね! そろいもそろって、平凡な顔ね。
この私が普通の人間に関わってる暇なんてないのに、
わざわざ来てあげたんだから感謝しなさい!」
これだけ騒いで、他の生徒が気にしていないということは、
この女、明らかにイマジネだ。
「この手紙を入れたのはおまえらか?」
とりあえず、手にしていた紙を見せてみると、男はため息をつきながら首を横に振った。
「生憎、俺には男にラブレターを送る趣味はない。もしあったとしても、もう少しマシなものを書くだろう。この目付きの悪さのせいだろうか、こっちにその気はないのに、すぐトラブルに巻き込まれてしまう。まったくもって心外だ。そうだ、イマジネなんているから、こうやって俺には関係ない問題をなすりつけられてしまうんだ。やれやれ、もし過去に戻れるなら俺は」
「っていうか、あなたたち、誰?」
ねとりの問いに、二人はようやく自己紹介を始めた。
「俺は主人公同盟の一人、隅田友和だ」
「そのイマジネ、角辺三五七よ。会えたことを光栄に思いなさい!」
隅田はたかしを見て一言。
「そういうわけで、俺と勝負をしてほしいのだが」
「え、お断りします」
ちょっとした間が空いた後、隅田はどこかへ電話をかけ始めた。
「……向こうはやる気ないようだが」
『……え?』
電話の向こうから、明らかに焦っている声が聞こえてきた。
何かをまくしたてられていた隅田は、電話をこちらに向けてくる。
「なんで戦わないんだ、って」
「いや、俺の学園ライフに必要なイマジネは揃ったみたいなんで、もういいかな、と」
「……だそうだが」
『いやいやいや、それはこっちが困る。お願いです。頼みます。勝負してください』
電話の声を聞いて隅田は「やれやれ」と声を出して語り始めた。
「こちらとしても戦う理由はないのだが、友人なので引き受けないわけにはいかない。人間には二種類いる。使う奴と、使われる奴、俺は明らかに後者だ。そうなのだ、昔から面倒臭いと思っていても、お人好しの性格のせいか、ついつい手を貸してしまう。おかげで今じゃ付いたあだ名は『便利屋』だ。俺はただ平凡な学園生活を送りたかっただけなのに」
「なんか面倒くせえな、こいつ」たかしは素直な感想を述べた。
三五七がビシっと指を指す。
「男なら勝負しなさい! この角辺三五七が勝負してあげるって言ってんのよ?
ハハーン、さては怖いのね? 負けるのが怖くて、尻尾巻いて逃げるのね?」
「こいつも面倒くせえな!?」




