第33話「しゅごい、しゅごーい」
実はイマジネ使いだった犬神が語る。
「けど一か所だけ間違いがあります。
戦いの途中、法家が私を見たのは指示を仰いだからじゃない。
私の動揺が伝わってしまったからです」
「動揺?」
「ええ、そう」
犬神がキッっとねとりを睨みつける。
「その小娘が、朱鷺お姉さまにちょっかいだそうとするから!」
それは犬神が初めて見せた、感情らしき感情だった。
ねとりが手で口を覆い隠す。
「あらー、もしかして、そっちの道の方?」
「そうよ。お姉さまは、貴方達のような下賤の人間が近づいていい存在じゃない」
そう言ってカタカタとパソコンをいじりだした。
「身長一六五センチ、体重四五キロ。バストDカップ。成績Aランク。
趣味は紅茶の飲み比べ! 寝る時の恰好はネグリジェ! 元から人気者で、私は地味な一般人。
接点なんてなかった。どうにかしたいと思っていたら、彼が現れた」
犬神は法家に目をやる。
「能力を使って、せっかくお姉さまに近づけたのに!
居心地のいい場所を作り上げたのに!」
あそ部のメンバーは、犬神の演説もつゆ知らず、すやすや眠っていた。
「あるわけないじゃない、こんな部活!
いるわけないじゃない、こんな人たち! 元勇者とか全部ウソよ!
部も、メンバーの性格も、全部私が作り上げたの。
くだらない日常から離れるための、非日常を!」
「犬神さん……」法家が彼女の肩を抱く。
「法家を生徒たちに認識させたのはなんのためだ?」
「あそ部を、形だけでも正式な部にするため、生徒会に忍ばせる人間が必要だったの。
そうでもしなきゃ、部室なんて手に入らない」
犬神が壊れたように笑う。
「せっかく、せっかく私だけの楽園を作り出したのに……」
消沈する犬神に、たかしは告げた。
「だったら、自分だけの世界で好きにしてればよかったんだ。
手を出してきたからには、奪われる覚悟もしとけ。それがこっちの日常だ」
たかしのセリフがビシっと決まった。
逆転勝利。犬神と法家の二人は、ただうなだれているだけだった。
「ふぅー、お疲れお疲れ」とねとり。
「しゅごーい、意外に頑張ってた」「悪くなかったよ(良くもなかったけど)」
インリとパコもほめてくれる。
たかしは勝利に酔いながらも、気持ちを切り替えた。
「さて、こっからが本題だ。法家、あんたが八木沼をスカウトしたのは間違いないな?」
「ええ、僕が彼を同盟に誘ったんです。犬神さんの命令で」
法家は淡々と答えた。
「主人公同盟ってやつか。それは何だ?」




