第30話「サオヘタル・パニック!」
やばい。これは見分けがつかない。むやみに追うだけでは時間のロスになる。
ここはきっと勝負所。イマジネを使うならここしかない。
「パコ!」
名前を呼ぶと、彼女はふよふよ上から降りてきた。
「今度は何?」
「メール用意! 文面は『動きを止めろ!』だ」
向こうのタイピング女に負けず劣らずのスピードで、パコはメールを打つ。
すると数体の法家が目を輝かせた。
「わー、これが獅子王君の持っていたイマジネですね!」
獅子王からパコを奪ったことを知っているのか。
喜んでいた法家だが、すぐに表情が申し訳なさそうなものに変わる。
「でも、そのメール、本物に当てなきゃ意味ないんですよね?」
さらに分身が増え、すべてがシャッフルされる。もうどれが本物かはわからない。
だがこっちにも考えがある。黒い笑みと共に、切り札に声をかけた。
「準備は済んでるな?」
切り札、インリは自信満々に、ない胸を張る。
「えっへん。部室で会ったときにちゃんと仕込んでおいたよぅ、法家に青い稲妻を」
ということは。
インリは、パコの身に赤い火花を散らす。この状態でメールを撃てば!
法家全員が一斉に慌てた表情を見せた。
「その力は……!」
「いっけえええええええええええ!」
パコの放ったメールは、一体、二体と、偽物の法家の身体をすり抜け、
最終的に、ある一体へと向かっていく。
その一体の動きが完全に止まった。表情は驚きで固まっている。
見つけた! あれが本物の法家明だ!
「くっ!」
法家は、飛んできた矢をギリギリのところでかわす。
が、矢はすぐさま、そのままの勢いで法家のもとに戻ってくる。
ここを逃す手はない。たかしもすかさず地面を蹴り、猛ダッシュ。
前門のたかしに、後門のメール。完全に挟み打ちで追いつめた!
目の前の身体に手を伸ばし、ついに奴を捕まえた……。
と思った次の瞬間。
そんなたかしをあざ笑うように、法家の身体は姿を消した。
「……は?」
目の前にはパコが放った矢。ぶつかりそうになるところを、
変な音が出そうなほど身体をひねり、たかしはその場に転がった。
間一髪、危うく自爆するとこだった。
どういうことだ。捕まえそうだったのに、姿が消えたということは。
「残念! それも偽物ですわ!」朱鷺が叫ぶ。
「甘いね」「スイーツだね」双子が騒ぐ。
犬神がメガネくいっ。「その程度の力では捕まえられません」
「ほらほら、もっと本気で走って!」とりょーちん。
「オーッホッホ、やはり我があそ部は最強なのですわ!
遊びに優しく、ルールに厳しく。我らそろって――」
「あそ部!」
朱鷺の宣言にギャラリーはわいわい沸いている。
インリが力を仕込んでいたのに気づかれていたのか?
それすらも利用した罠だったのか?
「まだ勝負は終わってませんよ」
再び法家が姿を現したと思うと、数体増え、またシャッフルが始まった。
余裕なのか、その中の一体がチラっとギャラリーの方に視線をやった。
すると突然、ねとり、パコ、インリの三人が弾き飛ばされた。
「ちょちょちょ、どういうこと!?」「むかー、中に入れないよぉ」
ねとりとインリが見えない壁のようなものを叩いている。
パコもふよふよと上から入ろうとするが、何かに阻まれたのか、首を横に振った。
法家に目をやると、不敵な笑みを浮かべている。初めて見せた、動きらしい動き。
「こっちのイマジネを封じたのか?」
たかしの呟きに、ねとりが首を傾げる。
「そんなの……どうやって?」
「イマジネを使ったに決まっている!」
だが、いつの間にイマジネを出現させたのか?
イマジネの姿を探すが、簡単には見つからない。どこかに隠れているのだろうか。
「おい、おまえたちも法家のイマジネを探せ!」
ねとりたちにも指令を出すが、肝心のイマジネの姿は一向に見つからなかった。
「そんなことより、早く僕を捕まえないでいいんですか?」
余裕の法家に、朱鷺の声がかぶった。
「残り時間、五分ですわ!」




