第27話「元アイドルが婚約発表の日に行ったバスツアー」
突如、立ちはだかったダンジョンのような建造物を前に、
ねとりが心配そうにこちらを見つめる。
「作戦とかあるの?」
「ああ、任せろ。向こうが油断しているうちにケリをつける」
「それ、勢いだけだよぉ」とインリ。
そうしているうちに三分が経過し、
「では貴方も出発なさって!」
朱鷺が声をあげた。
「よーい、スタート! 制限時間は三十分ですのよ!」
つまり、三十分以内に、先を行く法家を捕まえなければ負けだ。
「ほら、ご主人、走って走って」「インリ、遊ぶの好きー」「ダルい(眠い)」
文句を言いつつも、一応ねとりたち三人も一緒についてきてくれるようだ。
と、数歩進んだところで、いきなり目の前に難関が立ちはだかる。
「……おいおい。マジか」
道が左右に分かれ、その先もさらに枝分かれしている。
ダンジョンに定番の、迷路のような通路が広がっていた。
朱鷺が堂々と宣言する。
「第一関門『迷宮ラビリンス』ですわ!」
工事中のためか、天井部分は吹き抜けになっていた。
「こうやって見ると、ダンジョンっていうより、
地方遊園地の大型迷路って感じだな……」
「元アイドルが婚約発表の日に企画したバスツアーでやってそうだね」とねとり評。
まあ泣き言を言っていても仕方ない。
なるべく最速でクリアすべく、たかしは、がむしゃらに走りまわった。
「うおおおおおおお!」
グルグルっとコースを回った後、
やがて、ねとりたちが待っている入口に戻ってくる。
「おかえり」
「やべえ、全然抜け出せねえ!」
今度はねとりたちと一緒に歩くが、別れ道に来るたびに揉めてしまう。
「こういうときは、右に行くんだよねっ! 10年くらい休載してる漫画で読んだよ!」
「お姉ちゃん、もう飽きたよぅ。2人で家に帰って寝ちゃおう?」
「おいおい、人生でも迷路でも迷っちまうのか」
子供の頃は大型迷路も好きだったけど、今やるとなるとなかなかキツイ。
おそらく法家は正解のルートを知っているのだろう。とっくに突破しているはずだ。
「簡単なのに」「解けないの?」
上から双子の声が響いた。
二階ほどの高さにある通路に、あそ部の連中はいた。
高みの見物か。そりゃ上から見てれば簡単だろうさ。
上から……? たかしはあることに気づく。
「おい、パコ」
「今メールで忙しいんですけど(ダルぃ、ヤバぃ、早く帰りたぃ)」
「ちょっと飛んで、上からの視点で指示をくれ」
「えー」
「頼むから」
「……今度ドンキでおごりね(あ、パンツ見たら許さないから!///)」
パコはふわふわと浮かび上がっていった。
出口から逆算しているのだろう、指でなぞるようにして迷路を解いている。
「とりあえずそこ右行って」
「おう」
「左行って、次の角も左」
「はい」
「その場でひざまずいて鼻フックしながら『私は豚です』って言って」
「後で言うから!」
余計な指示をもらいつつも、
さすがに上からだと簡単なのか、やがてゴールにたどり着いた。
「えーい、やったね!」インリもウキウキのようだ。
「パコちゃん、お疲れ様」ねとりのねぎらいに、パコは少しだけ頬を染めた。
なんとか第一関門を突破した。
「さあ、次だ次……って、なんじゃこりゃああああ」
やってきた次の関門をみてたかしは絶叫する。




