第22話「耳舐めたい」
イマジネが消えている間は、その能力も無効のようだ。
気を失っている八木沼には、たかしでも簡単に触れたので、
とりあえず八木沼のカバンの紐で、物理的に身体の自由を奪っておいた。
「……オレは……負けたのか……」
八木沼が目を覚ますと同時にインリも姿を現した。
「おにいちゃん……」
二人はもう抵抗する気もないようだった。
たかしは、座っている八木沼を見下ろすように一歩近づく。
「そういや聞きたかったことがあるんだが……
なんで、鬼姫に力を使ったんだ?」
「あ、それ私も聞きたい」とねとり。
すると、インリが唐突に頬を膨らませる。「インリ……あの人嫌いだもん」
「えっ、そんな理由で?」
「インリには大問題なのー!」
女性同士の嫉妬というやつだろうか。
八木沼が情報を補足してくれる。
「鬼姫さんには、前から目を付けられていてね。
女の子にたまたま偶然ぶつかって、くんずほぐれつになっていたところを、
監視カメラに撮られていたみたいなんだ。
一回ひどく叱られてから、インリが彼女のことをすっかり嫌っちゃって……」
「なるほど」
それで反発して遠ざけてたのか。
だがそうなると、また別の疑問が湧いてきた。
「俺にはなんで力を使ったんだ? 別にそっちとは絡みがなかったはずだけど……」
「それは……」
八木沼は周囲を探るような様子を見せると、小声で呟いた。
「頼まれたんだ」
「頼まれた?」
「ああ、その力をいかさないかって、スカウトに来た男に。
怪しいから結局断ったけど、今後オレには関わらない条件として、おまえたちに力を使ったんだ」
新たなる登場人物。スカウトの男。
「そいつは誰だ?」
「わからない。けど『主人公同盟』の一員と名乗っていた」
「主人公同盟?」
ふざけた名前だ。だがスカウトに来たということは、
八木沼のイマジネ能力を把握していたということ。
しかも相手はたかしの存在にも気が付いている。
こいつの力を手に入れておきたかったということは、何か計画でも動いているのだろうか。
「もういいだろ。後は好きにしてくれ」
八木沼ががっくり肩を落としたところで、ねとりがウキウキした顔をする。
「さてと、じゃあこの子は、もらっていきますね」
「イヤ……おにいちゃん」
インリはその場から逃げ出そうとする。
と、ねとりは後ろからインリの胸を揉みしだいた。
「ちょ、やっ!」
顔だけ後ろを向いたところ、そのまま唇を奪い取る。
「や……やむぅ……んっ……」
ねとりとインリは、そのままちゅっちゅしていた。
その光景を見て、八木沼はギリッっと歯を食いしばる。
「どうだ、辛いだろ?」
たかしは淡々と語った。
「けどな、おまえが今まで好きにしてた女子にも、憧れる男子はいたんだ。
それを目の前でもてあそんできた、その罰がこれだよ……」
説教が決まって満足げなたかしに、八木沼が気づいたように言う。
「ん? でも、おまえだって、鬼姫に同じようなことしようとしてないか?」
「あっ」
「確かに……(耳舐めたいとか言ってた)」とパコ。
誰かが憧れている女子を玩具にしようとしている。それは否定できない。
正直痛いとこを突かれたので、少し悩んだ後、たかしは正々堂々と答えてやった。
「んっ、なんか言ったか?」
※※※
数人の人物が、卓を囲むように座っていた。
中心にいた人物が最初に口を開く。
「何か動きがあったとか」
「ええ」
細身の人物が不機嫌そうに、トントンと机を指で叩いた。
「こちら側に引き入れたかった有望なイマジネ使いがまた一人、
奴の手によって潰されました……」
すると、体格のいい人物がおもむろに立ちあがる。
「これは忌々しき事態だ! このままでは秩序が乱れてしまう!」
中心の人物が、指を組んだまま言い放つ。
「早急に手を打て。おまえたち、四天王の名に恥じぬ活躍を期待している」
暗闇に、覚悟のこもった返事が響いた。
「――御意」




