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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一方通行

作者: 後乃智乃

衝動的に書いたので内容はハチャメチャですが、よかったら感想等待ってます。

「また会ったね。元気?」



 この女の子、最近毎日会う。



 名前は知らない。歳も、性格も、何一つとして知らない。



 ただ分かるのは僕と同じ制服を着ているから、同じ学校に通ってるんだな、ということだけ。



 一ヶ月ほど前から、家と学校の、ちょうど真ん中当たりで待ち伏せされている。



 初めて会った時からまた会ったねと言われる。僕は呆けてしまったが、彼女を取り巻いている雰囲気がその不自然を飲み込んでしまった。



 あたかも以前から知り合いだったような、そんな気にさせられるのだ。



 だから僕は今日も、同じように返す。




「……誰?」




 ######




「よっ、今日も元気か?」



 こいつ、ここ最近ずっとここで待ってる。



 夕方5時半。たそがれの中、電信柱に寄りかかっているんだ。



「あんた、毎日キモいんだけど」



 そんなことを吐く。



 歩きは止めない。



 決して彼は、電信柱から離れることはない。



 電信柱の影を踏み越える。一瞬視界が暗くちらつく。



「また明日な!」



 彼は私の背中に声を投げてくる。



 その声は、未だに私の心を苛んでいる。



 ######



 真っ赤に流れる僕の血潮。



 幼い頃に聞いたそんなフレーズが頭の中をリフレインしていた。



 嘘じゃないか。



 大嘘じゃないか。



 血って、真っ赤じゃないじゃないか。



 それとも何だ? 僕の血は赤いのか?



 彼女は女だから、一人称が私だったから血が赤くないのか?


 トラックから出てきた影がこっちに歩いてくる。



 なんだ。あれは。



 あれの血は赤いのかい?



 あの影にも、僕にも、赤い血が流れているのかい?



 それとも……君が、君があまりにも、取り返しのつかないほどに流してしまった血のように、赤黒い血が流れているのかい?



 もうダメだ、世界が赤黒い。






 僕の意識は、赤と黒に染まっていたが、やがてすべてが黒となり僕を飲み込んでいった。



 僕の一部を連れて。



 ######



 私は幸運だ。



 故に、毎日吐くほどの自己嫌悪に襲われているが、それでも幸運だと言わざるを得ない。



 あの時、彼を轢きずった白いトラックと鮮血が、瞼の裏に焼き付いて剥がれたことはない。



 なんで、どうして彼が。



 この事について考えると思考の負の連鎖が私を朝へ連れて行くので、むりやり気を逸らす。



 まだ吹っ切れられないのか。



 まだ一ヶ月だから、仕方がないのか。



 地球は回転をやめないしサラリーマンは歩みを止めない。



 学生は遊ぶのをやめないし政治家は汚職をやめない。



 そんな月次な表現がこれほど鋭利になるなんて一ヶ月前までは思っても見なかった。



 私だけ、進めない。



 社会という濁流の中の澱みで、蟠っている。



 幸運なのは、蟠っていることを自覚していることだ。



 あの事を、記憶の奥に封じ込めずに居られることだ。



 あとは、進むだけ。



 縋らずに、自分の足で、進むだけだ。



 その一歩がとても重い。




 彼は明日も、あそこに立っているのだろうか。



 ######




 ―――――逃げちゃだめだ。




 ######



「また会ったね。元気?」



 あぁ、僕は元気だよ。



「良かった。もう平気かな?」



 あぁ、もう平気。



「そっか。それじゃあ、バイバイ」






 その日から彼女を見ることはなくなった。



 逃げるのは簡単なことだ。



 しかし逃げ道というものは往々にして前には存在しない。



 目を逸らさずに前を見ること。



 そんな簡単なことを、彼女は教えてくれた。




 ######



「よっ、元気?」



 うん、すこぶる……ね。



「……そっか、そりゃいいや」



 でも、もういいんだ。大丈夫。




 おいで。




「おう、これからもよろしくな!」






 その日以来、あの電信柱で彼を見ることはなくなった。



 あの記憶を完全に捨てることはできない。だから、共に生きることにした。



 白黒はっきりつけることが全てじゃないと、彼は教えてくれる。



 今日も私は、前へ進める。



 ######





 ――――――君のおかげで。

書き始めから完成まで少し間が空いたので、うまくまとまりませんでした。残念。

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