故意的誤解 3
「はー、はー…助かったマヤ」
俺は目の前の金髪女子に礼を言う。しかし彼女はどこと無く不服そうだった。
「どうした? なんか奢ろうか?」
「…主らしくなかった」
「俺らしく?」
まあ確かに普段はあんな約束断ってるが、
「…本当は嫌なら、我から断っておくぞ」
「いやいい。受けると言ったのは俺だからな」
「だが!!」
どうも食い下がる彼女に疑問を持つが、俺は彼女の頭をポン、として、
「まー助けてもらってカッコつかないし、ひとまずは会長に相談してしばらく守ってもらうさ。これも一応保証対象にはなるだろうからな」
「なぜそうなのだ!!」
振り返るとマヤは涙目で訴える。
「なんでいつも一人で抱えるのだ! 我では力にならないのか!? それともあのような事をしてマオを片付けた笑が信用できんのか!?」
俺はチョップをかますと、マヤは頭を押さえてうずくまる。その手の上に俺の手を乗せて、
「……それだけはないから安心しろ。俺はマオも、マヤも、ユウカも信じてる。それにお前にはマオを守る使命があるんだ。俺の事は今回は目を瞑ってくれ。…分かってるだろ? 今、別の【何か】も動いている事を」
舞夜は思い当たる事があったのか、俺を大きく見開いた目で見る。
おそらく敦のノートには欠点があり、それは4月から現れた三人の女子生徒の存在のデカさ。霧隠しの件も合わせて、もし本当に『魔法』が絡むなら、その黒幕はきっと麻央と優華を狙うはずだ。
優華は勇者一行がいるし、カナコが近くにいる。
だが、最近ルシファーが忙しく、目立つ残りの四天王ではいつも一緒にいられない麻央は手薄だ。
何より、舞夜を外に出した事が今の麻央を弱体させている。マフラーの能力も元は舞夜込みの能力。まさかあの日舞夜が出張ってくるとは思わなかったためほとんどの効力は今の地点発揮していない。しいて多少短気な麻央の突発的な魔法を消す程度。
今の麻央に全盛期ほどの力はない。魔力もほぼ舞夜が原型みたいなもので、一般よりやや上なだけ。
そもそも舞夜は、俺の知る上では『麻央』ではなく『魔王の力』の思念体。いくつもの月日を経て継承され続け、先代たちの呪いも含めて膨大となり、時にはその意志までも継承する。
舞夜は大きな憎悪を変換して作り上げられた『別人格』、言うなれば麻央は『二重人格』だ。憎悪に蝕まれやすい麻央の心を守るために、麻央の無意識が生み出した『精神の魔王』。元は殺戮を好み、殺す事を嫌う麻央のストレスを発散する役割を持つ。
しかしそれはあくまで呪縛からの破壊。今は呪縛は消え、こうして安定した存在として生きている。救いは、彼女が生み出した思念体が変質していることへの、破壊に対する『自己矛盾』が起こらない事だろう。
舞夜にはもう破壊衝動はないのだから、それでも人格を保てているのはやはり、麻央の奥底に眠る何かが強大すぎると言う事だろうかとリブは言っていた、
しかし現状、麻央個人に今までの力はない。そして俺がいない時に守ってくれる奴も––––
せめて『クロエ』が生きていれば変わったかもしれないが––––
「ま、頼りにしてるぜマヤ」
「ちょ、ユウマ!!」
マヤの珍しい小言は聞く気はない。俺はそそくさとその場から退散した。
ついでに知りたい事ができたから、まあ逃げてはいない。うん逃げてない!




