あの理事長にして、この会長あり 2
「……と、それが昨日の話だ」
「………ユウマ、フード脱ぐ」
「ああ悪い」
いつの間にか被ってたフードをとり、ため息を溢す。
「まさかこんな事になるとはなー。で、お前ならどうよ悪友」
「うーん……水着でり––––」
信木の煩悩炸裂前に文坂のフライパンが飛んだ。かわりにハジメが続ける。
「……やっぱ葉坂高校名物の『二人三脚』はどうだ?」
「『二人三脚』? これまた微妙な」
正直偏見かもしれないが、運動会の人気競技といえば『騎馬戦』、『クラス対抗リレー』を思い浮かべてしまう。確かに悪くないとは思うが、他にも色々なものがあるだろう。
「なんだユウマ、知らねーのか?」
と頭をおさえた信木がさらに話を続ける。
「この葉坂高校では約2日間運動会をする」
「2日もか?」
「そ。かなり集客が見込めるとかで商店街は運動会の日は必ず出店しているほどだ。そんな中で客目線では色々と見所がある。だってさ、『超高校級』を集めた学校だ。どんな番狂わせが来るかで楽しめたりするからな」
と、今度はハジメに会話のバトンを渡す。
「……なお、それはあくまで『客側』の見解で、『生徒』のメインが二人三脚なんだよ」
「詳しく」
「ほら、よく学校の類でのジンクスってあるだろ? 例えば『その木の前で告白すれば結ばれる』とか、『フォークダンスで最後に一緒だった人と一生を』とか」
「あーはいはい」
なんとなくわかった。確かにイディオでも似た方はあったし、やはりどんなに世界を越えても《ジンクス》はまとわりつくようだ。
「……だがさ、それってこじ付けだろ? だって前者はそもそもその内容を知っていて来るわけだから、振るならそもそもそこまで来るの面倒じゃん。後者だって、多分ちょっと計算すれば上手くできるんじゃね?」
「お前って時々身も蓋もねーな。……とにかくだ。その《ジンクス》が二人三脚にもあってだな、確か『最後まで走り切った二人は結ばれる』って話だぞ?」
それを聞き、真っ先に俺は麻央と舞夜と優華からの誘いは断ると誓った。
「それだってさ、別に好き同士で走れば普通に終わるだろ?」
すると何故か、優華と俺以外が首を振る。
「……それは『ゴールできる』が前提で成り立つ身も蓋話だ。この二人三脚に至ってはゴールの地点でかなり難しいんだ」
ハジメはそう言い、メモ帳を開いて、
「……まず二人三脚に観客は関係ない。大体舞坂商店街までの範囲で毎年ランダムだ」
あの坂登り下りだけでかなり疲れると思うんだが……なんでかミサならやりかねないと思う。
「さらに言うなら、このジンクスは学校側が公式に認めたものであって、理事長の意向でかなり障害が難しく設定されている」
「まてまて! 二人三脚に障害物競走でも混ぜたのか?!」
「まさにそれだ」
…マジか。確かにそれでゴールできれば結ばれるほどの絆の証明にはなるな。てか攻略してみたいな。
「よしノブキ!」
「いやそっちのケはないって」
あからさまに後ずさるため、俺は一を見るが、
「……悪いが俺も嫌だ」
「俺も嫌だぞ?」
一はおろか、智も間髪入れず拒否られた。
「何勘違いしてんだよお前ら。いいか? 俺たちはこの競技を制覇することが俺たちの青春で素晴らしい経験になると何故わからない!!」
すると若干引き気味な綺紀が口を開く。
「…ならマオを誘ったほうがいいじゃない。あの子クラスどころか陸上部のエースの記録越えたって噂で結構運動部からスカウトもらってるらしいし」
「……それ以外で」
確かに勝つためなら手段を選んだらはしないよ? BLだって我慢するよ? でもさ、だけどさ……異性との恋のジンクスだけはトラウマがあるから嫌だ。
そんな事を口には出来ず、
「……ま、誰かほかあたってみるよ」
予鈴もなったため解散となった。
去り際、
「………ユウマ、困ったときにフード被る癖、直すべき」
と優華に注意された。




