闇夜の暗殺者
「……この世界でまさかここまでの人材はそうはいないな」
「…そりゃどうも」
闇に紛れ、ターゲットはなお廃墟に潜伏するが、
「まあ逃げられないさ」
「……チッ」
物陰に斬撃を放つ。奴はいた場所から飛び出て転がるように回避する。
「……異能、とは少し違うか」
相手も観察するが、しかしその隙を見落とさない。
「くっ、さすがだね」
「良いから楽になっときな。……痛いのは嫌だろ?」
「まあそうだね。だけど––––」
奴は素早く懐に近付かれ……
「っととと」
素早く後方に飛ぶ。
「……勘がいいのはやりにくいな」
「そりゃ、死線は何度もくぐったからね」
あと数ミリ近付いてくれれば、隠れていた狙撃手が撃ち殺してくれたものの、奴は一枚上手だった。
だが、うちの狙撃手はそのさらに上手だ。
ダンッ、と音がこだまし、奴の足を射抜く。
「……」
叫ばず、ただじっと足を見る奴は、ニタッと笑った。
「素晴らしい! ここまで躊躇いのない、寸分違わぬ神技は見た事ない! 実に興味深いね」
そういい、歩けないはずなのに奴はむしろ跳躍した。狙撃地点に。
「君かい?」
「……ッ!?」
俺は懐のサバイバルナイフを取り出し切り裂くが、裂いたのは服のみ。
「ははは、実にいい!」
そしてターゲットは再び後方に飛び、俺と彼女の間で止まった。
彼女は拳銃を構え、俺は狙撃銃を構える。
しかし奴は動揺しない。
「いいねいいね! なんでそっち側にいるんだい君?」
「……勝手だろ」
「そう勝手! たが君の本質は闇じゃない。むしろ眩しくなるほどの光だ!! 君はなぜそちらに立つ?」
「………」
引き金をひくが、奴は避ける。そこを見越して彼女も撃つが、弾丸が空中で止まる。
どうやら本当にあの少年のように『魔法』を使うようだ。だが関係ない。
しかし奴は腕時計を見て、
「……そろそろ会合の時間か。ではここで手打ちとさせてもらうよ?」
「逃すか」
更に撃つが、今度は霧散した。
「……追います」
俺はなんとなくそこまで遠くにいないと思った。だから駆け出そうとし、しかし第三者が道を塞ぐ。
「……なんのつもりだ堂島」
葉巻を吸った図体のデカく顔に傷だらけの男が、額に拳銃を突きつける。
「騒ぐな子犬風情が。俺はそこの女に用があるんだ」
「なら塞ぐな。俺はあいつを追う」
「おっとそれもダメだ」
ニヤリと気色悪い笑みを見せ、
「おい『坂波』、次のターゲットは変更だ」
「……なんだと?」
スキンヘッドは四枚の写真を手に取る。
「まず表のターゲットだが、葉坂高校の生徒会長様だ」
と、一枚の写真を投げる。
「『松尾 花』、融資家だ。依頼主は伏せるが、そいつからいくらか前金貰ってる」
そして残りの三枚がひらっと地面に落とされる。
拾い上げた写真に、彼女の表情は強張った。
「問題は裏だ。『煤野 麻央』、『傘木 優華』は他の投資家、財閥等に狙われている。そしてそれ以上に厄介視されているのが『平和 湧磨』だ」
「……なあ、いつから《アルネス》は無慈悲な殺し屋に転職した?」
「…それを、いくらボスの長年の付き合いでも、例えくらいが高くても、貴様のようなただの女が気にすんな」
「…悪いがこれが《ボス》がとる内容とは思えんが?」
「いいから猟犬は猟犬らしく指示に従え!! ……それと、さっきのやつは取引相手だ。これ以上あいつに危害加えるなよ」
男は言い残し、ズカズカとその場を去った。
彼女は、拳銃を地面に叩きつけた。




