Re.仲良し主人と、犬猿なる右腕
「なんですか!!」
「やるってか!!」
「いいから報告しろって……」
この相変わらずさには安心感があるが、こっちとしては今は《霧隠し》が重要だ。正直な話、ハジメの説明でもしかしたら『魔法』絡みの事件な気がしてならない。もしそうなら、連れ込んだのはおそらく俺にもあるだろうし、何より魔法の悪用は許すわけにいかない。
ようやく収まり、先に口を開いたのはギンキだった。
「まずハンサとカナコで現場に行ってはみたが」
「おお、勇者一行総出かよ」
「お前とユウカとアイツが居ないがな。それで、お前の見立て通りだが……『魔痕』が薄くだがあった」
『魔痕』は単純に『魔法痕跡』の略称で、魔法を使えば微量ながら粒子が漂っている事があり、それの質や量、劣化具合でよく戦闘からどのくらい経過しているとか把握できる。そして普通の痕跡と大きく違うとすれば、『見えるか見えないか』、そして『宙に空いてるか、地に付着してるか』だ。
「魔痕は宙に浮いてた。薄いが、おそらく規模はだいぶデカかったと思う。『おそらく設置型ではないから術者はその中にいたはずだ』ってハンサは仮定している」
「こちらも、ネット等で検索してみましたが」
と今度はルシファーが数枚の紙を俺に手渡す。ルシファーはどうやら機械系に強いようで、かなり分かり易くまとめられた資料が証明している。
「監視カメラなどをジャックして、どうやら霧の中に入っていく被害者を何人か捉えていた。ですが、霧の中での映像は高濃度の霧のみ、誰かが通る影一つ存在しませんでした」
「つまり霧の中は異空間、と考えるべきか」
「その事なんだが」
とギンキはイヤホンの挿さったボイスレコーダーを突き出す。巻かれたイヤホンを解き、片耳につけて音量調節して再生する。
『………から、あの霧がいきなり出てきたと思ったら化け物が現れたんだって!! 証拠? いや、焦って逃げたからないけど……とにかく信じてくれって!! あんな豚みたいな人間、誰だってみたら逃げるだろ!?』
「……これは?」
「運良く逃げた奴から聞いた事だ。錯乱はしてたが、正気ではあったな。お前はどう見る?」
「『豚みたいな人間』、ね……《オーク》を連想するが、統括長から見てどう判断する? お前らのとこのやつって線は…」
「ありえないですね」
そりゃそうだ。こいつらのボスは麻央だ。アイツはこの世界に来るときにほかの奴等に釘を刺している。命惜しさよりも、死を超えた苦痛を恐れるだろう。アイツは本気になればそれができるから。
「じゃ、これはどうだろうな……」
一歩前進したようで、かなり後退した気分になってきた。
まだ、情報が足りないのだろうか?




