裏返り 3
「……な…にが」
「……やっぱり」
僕らは瓦礫に埋もれ、瓦礫を退ける。
こうなる気がして事前に子供達の方に簡易的な防御結界を張っていた為、漏れる光の場所に魔法を放って瓦礫を消すと、無傷の子供達を守る結界が残っていた。
そして今度は坂波が怒りの表情で肩を掴む。
「ススノ! お前何をした!!」
「……したの魔法商人、その手伝いをしたのが貴方達よ」
「だから––––」
「彼女には魔法の適性があっただけ」
すると力が抜けた彼女が地面にへたり込む。
「……魔法商人の真意は定かではないけれど、その商人がもし僕やユウマが想像している通りなら、貴方達は実験に使われた。……元々は潜在的魔法の素質を見るための杖だった。寿命を犠牲に、科学で証明できない力を与える杖を。だけど彼女は違った。彼女は適性があったからおそらく寿命を削ってはいない。奥底で厳重にかけられた鍵を、あの杖が開けたの。だから杖がなかったあの状態でも力を発揮したわけ」
「……なぜ、ソイツはそれをするんだ?」
「駒が欲しかったんでしょ?……そいつは洗脳が得意だったから、『狂信者』も多くいたわね」
「そん…な…」
しかし運が良かった。この地形はかなり複雑で、実際土煙で視界はあまり良くはないとはいえ、付近にコハクはいない事は分かっている。
「…さらに運がいい」
坂波が頭を上げたと同時、照明が壊されてなおその黒さが分かるモヤが目の前に現れ、そしてすぐに人型になった。
「ペルね」
「ご名答」
黒が印象的な妖美の闇精霊王『ペルセポネ』が姿を現した。
「彼から、惨事の際は貴方につくように言われていたのよマオ」
「へえー、てっきり貴方は魔王らしいマヤにつくと思ってたなー」
「いやいや、昨日のも含めてお主が魔王だったが……まあいい」
そこで、ペルは子供達の方を指差し、
「……運んだほうがいいかしら?」
「話が早くて助かるわー!」
「あなたが助けを求めてないのは分かっていたからね」
そういい、僕同様フワッと黒い霧で子供達を浮かせる。
「……あ、そうそう」
「なに?」
「いや本当はイフリーもセットでだったんだけどねー」
と、なにか困った顔をした後、
「……ま、あなたに隠し事すると後が怖いからいうけどさ」
と、続けた。
「……現在イフリート、ゼクティス、ウンディーネが『あの残党』と接触して、退けたものの三人戦闘不能になったわ」
それを言い残し、彼女はふっと闇らしく消えた。
「……邪魔すぎるわあいつ」
振り返った坂波にギョッとされるほどいい顔をしていない僕は、そう、口にしていた。