裏返り 2
「コハク、待て!」
坂波は慌てるように静止するが、コハクと呼ばれた少女は震えつつも杖を僕に向ける。
「……み、みんなをどうするつもり!」
一度下ろした彼らの心配をするあたり、彼らとは若干違うことがわかる。だからか坂波の慌てようには納得がいった。
「……更生させる為に連れて行くの」
「ど、どこに!」
「……そうね、考え方からすれば今までより怖いところ」
瞬間光の球が頰を掠めた。
彼女は手を震わせ、しかし正確に、あえて逸らすように放ったのが分かった。
その一瞬でわかる。このコハクと呼ばれる少女は、少なくともアルナスにいるには優しすぎる。そして……。
「ススノ手を出すな。あの子は話せばきっと––––」
「無理ね」
制す手を退け、僕はその子の前に一歩ずつ歩み寄る。
「……はじめに警告する。今すぐ敵意を消しなさい」
杖を強く握るコハクに、僕は呼び出した黒剣を、杖に振り下ろした。
杖は二つに割れる。核を壊した感覚がある為その杖にはもう力はない。でも––––。
「ススノ!」
切り上げの一撃を坂波のあのナイフで後方から止められる。
「頼むススノ! もう杖はないんだ! だから––––」
わかってない、と言おうとした時だった。
「あああああああああ!!」
僕と坂波は一緒に弾き飛ばされた。