黒歴史の継承者 4
「……な、なんだそれ! いらねー言っといてお前も『魔法商人』から貰ってたってか!?」
「……一緒にするな」
かざした両手に、黒く禍々しいナイフが二本握られていた。
「…そういえば『ザース』、お前は確か二年目だったな」
スキンヘッドの男『ザース』はゆっくりと頷く。すると坂波はニッと口を曲がる。
「……じゃあ知らないな。私がただの武器で仕事をし始めたのは三年前……この力は世界の均衡を壊しかねないってことでボスから止められた頃からだもんな」
そして両手のナイフをくるくる回し、右手だけ逆手持ちにして止める。
そこでザースは先ほどの威勢すら消え後ずさった。何かを理解し青ざめ、そして無意識に自己防衛姿勢をとりつつ距離を取る。
「三年前って……でもそいつは死んだって噂だし、そもそもそいつは男だと」
「あーそれね」
ザースは会話しつつも火球を放つが、それを坂波は虫を払うように斬る。
「……三年も経つとね、サラシじゃ隠せないのよねこの胸。髪はかなり伸びたし、意外と背も伸びたし……まあ」
彼女の動きに僕は手を出さなかった。いや、見てわかるが実力差は歴然、湧磨ならオーバーキルとさえ言っただろう。
「……そんな事って、あるのかよ」
ありえない、と言いたい彼に、坂波は冷ややかな目で告げた。
「貴様の魔法よりは現実的だぞ––––『切り裂きジャック』はな」