黒歴史の継承者 1
––––数十分前、通路
「……そんな程度なんだ」
ボソリと呟く。周りには倒れた数人の子供、そして立ち尽くす大人がいる。
「お、お前ら使えねーな!!」
そいつは、必死に戦って倒れた無実な子供を蹴り飛ばしていた。
その光景が、あの日魔物に蹴られ続けた幼馴染みを思い出し、いつのまにかそいつを僕が蹴り飛ばしていた。
「ゴボッ!?」
唾じゃない。口からは鮮血が飛ぶ。……いや、『鮮血』など、この男には分不相応か。
僕はソレの襟首を掴んで持ち上げる。
「……同罪でいいかと思ったけど」
ググッと首を締め上げる。
「貴様とこいつらは罪の差が違いすぎる」
誰にも見られることなくこいつを殺してしまおうと、ジワジワと締め上げながら笑みを浮かべる。
心から笑ってはいない。ただ知っているんだ、自分が死ぬ瞬間に訳も分からない笑みほど恐ろしいものはないことを、僕は知っている。
命乞いだろうが、声にもなってない男の口元はそんな動きをしたが、さらに締め上げた。
簡単には殺さない。この男の目は魔物に似ていたから。魔物に罪の感情はない。知能もなく、ただ自分が一番で、仲間が死にかけても簡単に切り捨てられる奴ら。そんな目だ。
だが、不意に銃弾が髪を掠めた。
手を離し、ドサっと落ちた男に目もくれずその先を見る。
「……あなたの言葉は嘘ですか? ユウマに嘘をついたのなら、ここでユウマが知る前に殺すけど?」
僕は手をかざし、眼前にいる『坂波 成』に警告する。