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「おらよっと!」
ヨーヨーはブンブン振り回して翻弄する。相手の武器にリーチはなく、距離さえあればぬるい。
すると拳銃を取り出した男に、俺はヨーヨーで弾き飛ばす。3メートルまでしかないように見せながら戦ったからか、5メートルも離れた距離で弾かれたことに驚き、動きが悪くなる瞬間を逃さずさらにブンブン振り回す。
「……くっ」
明らかに劣勢なのは理解しているはずだが、それでも再び二本のナイフで弾きつつ近づいたり、離れたりを繰り返す。
「……なあ」
「……なんだ?」
おお、話は聞いてくれるのか。なら続けよう。
「…坂波先生は今回の件、降りたぞ」
ピタリと止まった男に俺のヨーヨーは両方同時にやつの腹に打ち込まれ、壁のほうに吹き飛んだ。
崩れ落ちて、動かないのを確認して近付きながら続ける。
「あの人は今のアルネスに疑問を持っている。本来と違うと。あの人はガキに汚れ仕事をさせる今のアルネスを嫌っているんだとさ」
死んでないよな、と心配するが呼吸音は聞こえたのでホッとする。
「お前、坂波先生の一番の部下だってな? 上司は降りたんだ、お前はどうする?」
返事はなく、俺はため息と共にヨーヨーでグルグルっと拘束する。
「……まあいいか。俺もただの人間にそこまで力は使わない。もう諦めてそこで寝ててくれ」
パッとヨーヨーを離し、俺は皆がいるであろう方角に足を向ける。
もう決着はついた。もう戦う必要はない。あとは坂波先生の言ってた黒幕さんを捕縛するだけだ。
そう、思ってた。
『––––あなたは、ただの人で終わらせるわ』
「……ふざ……けるな」
バツンと千切れる紐の音に俺は再び奴を見る。
髪は金に発光し、その右手には豪勢な剣が握られていた。
どこから出した? あの糸をどうやってちぎった?
それよりも、俺は瞬時にスマホを取り出す。
「リブ、『多重結界』!!」
『分かってる!!』
前方に五、六枚の半透明の壁が連なる。だが––––
「『ホーリーセイバー』」
振り下ろされた剣圧は、そんな壁をいともたやすく貫いた––––