武士 1
「……なあノブキ」
「おう、なんだ?」
背中合わせになった時に一が声をかけてきた。
「…まるで武士だよな、お前って」
「はあ?」
言ってる意味がわからずにいると、一は続けた。
「お前、確か中学まで剣道界では《神童》って言われてたろ?」
「……それがどうした」
「お前、なんで中学二年から剣道を辞めたんだ?」
絶えず、焦るガキの魔法を互いに斬り消しながら、オレは嫌な感情をふつふつと蘇らせている。
「……調べてんじゃねーのかよ?」
挑発じみた笑みで聞き返したが、一には通用しなかったようで、
「調べたさ。だが誰にも言いふらさない内容まで調べられるほど有能な奴はいない。その剣筋、初心者が見たってすごいのはわかる」
「……買いかぶりだ」
それを最後に、オレたちの背は離れた。
オレは負けない、少なくとも『今』は。
だが、敗北をオレは何度も知っている。『前世』で、幼なじみに似た少女に。
慢心などしたことない。その前からオレは負け続けたのだから。
ただ、それ以外に負けないだけ。それだけじゃ足りないのに、オレは努力が足りなかった。
オレはあの日、初めて彼女以外に負け、世界を失った。
そして誓ったのだ、慢心せず、そして預けられる仲間を見つけることを。オレ一人で抱えられないと、知ったから。