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魔王と勇者に好かれた者 [再修正しますm(_ _)m  作者: ヨベ キラセス
第二章 幼女会長と暗殺者に思案したもの
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偽りの力 3

「………魔法売人」

 彼女達は事前に湧磨から情報をもらっていたようで、その内容を私たちに共有する。

 外では今なお魔法やら拳銃の弾やらが当たる音がするものの、崩される心配のない壁を無視して話を一通り聞く。

 そこで珍しく静かだった信木が手をあげる。

「あのさ、そういやオタクらは一体誰なんだ?」

「……それ聞いちゃうかー!」

 すると『ノム』と呼ばれた少女は、ウズウズしていた体をあげ、手を胸に当てた。『シル』は、相変わらず変わらぬ表情だった。

「私らは精霊––––」

「………『精霊王』」

 ノムの口をユウカが抑え、代わりに口にした。

 先ほどので皆納得していたが、『魔法売人』の説明もほぼ曖昧で、シルが第一印象より親切丁寧に補足してくれるくらいよく分からない説明の仕方をしていたため、皆そこに触れることも反応することもなかった。

「………イディオでは魔法を使えるものには『眷属』がつくの。今はいないけど私には《光の妖精》が、マオには《地獄の番犬》が、他にも《火を噴くトカゲ》に《風妖精》とか」

 すると舞夜が続けて話し始めた。

「まあ我はマオの裏部分だから、眷属は一つと言う誓約上その《番犬》が我の眷属でもあるわけだ。そして眷属の多くは精霊王が作り、そのものに合う実力と忠誠を持つのだ。だが」

「……なるほどな」

 どうやら信木は何か理解したようだった。

「なるほどって?」

 私は聞くと、信木はニヤッと、しかしツーっと汗をつたわせる。

「あいつの今までを考えてみろ? もはやチートだ。なら精霊王の一つや二つ、従わせていてもおかしくないだろ?」

「……七つ」

 ポツリと、シルがこぼす。

「…火、水、土、風、雷………そして魔族やそれに準ずるもののみが持つ闇、そして『勇者』という特殊な存在が持つ対照属性光。ユウマは本来呼べない精霊王を、それも全部呼んだ」

「……」

「ありゃ、驚かんなー」

 そりゃ驚いていたけど、それほど濃い一ヶ月でかなり耐性ができてきた気がする。

「まー、ユウマならチートだものねー」

 そう、私が口にしてみんなが同調するけど、二人の精霊王と優華はそこで暗くなった気がした。

「………ユウマは、みんなが思うほど強くない」

 それを聞き返そうとした時、不意に後ろからハジメに引っ張られた。

 瞬間土壁は瓦解し、火の玉が目の前をかすめていく。

「……それより早く対処すべきだな」

 一は真剣な声音で私に背を向ける。

「おーおー、おっさん達もう降参?」

 ニタッと笑う子供の手が振られ、再び火球が飛ぶ。


 しかし、それはハジメの前で消えた。見ると一は短剣を振りかざして、斬ったのだ。


「なあ?!」

「…斬れるようだ。なら問題ない」

 ハジメはそこから子供の方へ距離を詰め、そのナイフが子供の杖を捉え、へし折る。

「お、俺のステッ––––」

 少年が叫ぶが、すかさず手刀を受けて倒れる。

 一は確信めいたものを感じたようで、目線を信木に向ける。

「ノブキ、力を貸せ! サトシがいない以上君に頼るしかないんだ」

「……」

 信木は少し考え、シルの方を向きながら綺紀の肩をグイッと引っ張ってシルの方に放す。シルは「おっとっと」とキャッチし信木の目を見た。

「頼むぜ精霊王さま?」

そんな信木を見てシルはクスリと笑う。

「……君は、もしかしたらユウマに近い存在かもね」

「その褒め言葉、最高だな!!」

 信木は刀を右手に出し、ハジメと共に魔法の杖を持つ子供達に向かって走っていった。


「あいつがユウマに?」

「……彼には英雄の素質がある」

 シルは奮闘する二人をみてにこりと笑う。

 優華と舞夜もすぐ加勢し、シルとノムは私と綺紀を守るように魔法を放っている。

 みんなが誰も殺さない戦い方をする。優華は剣で杖を斬っては平たい剣の腹で叩いて気絶させ、信木とハジメは峰打ち、舞夜は持っていた武器を消して格闘戦に変えて正拳突きの連発で戦闘不能にさせた。「……さっきの続き」

「え?」

 子供達もだんだん対策していくため戦いは長引いている中、シルが私に向けて話す。

「ユウマが強くない、ってこと」

「あ、そういえば」

 優華はボソリと呟いた言葉、シルは魔法で牽制しながら話してくれた。

「……彼らには不要な話だけど、子供達の武器は自身に害を及ぼす可能性があるのを理解していない」

「…それってどういうこと?」

「あの魔法の杖、多分『奥底の魔力を強制的に引き出す』魔道具。本来使わない力を突然引き出せば……身を滅ぼす」

「そんな……」


 私は拳を握る。多分そんなこと、この子たちには理解できていないことを、そしてそれを利用した大人がいるんだってことも、知っている。


「魔道具は本来『初歩魔法が使えること』が最低限の使用条件。イディオならそれ以外の人が使用して死なないようにある程度のリミッターがあるけど」

 彼女は先ほど真っ先に倒した子供が持っていた杖を握っていた。

「……リミッターがない。そして過剰に吸収されている。……そしてその一部がどこかに転送されている」

「てん……そう?」

「多分親玉。似たものを前に見たことがある。………ユウマが対処した事もある」

 そう言い、彼女はさらに辛そうに、強く加えられた握力が杖をへし折った。

「……あなたにもし『努力せず手に入れられる力がある』と言われて、どうする?」

「それは……」

 いらない……とは口にできなかった。知ってしまったのだから、『ユウマ』というクラスメイトの絶対的魔法の力を見て、どこかで欲した自分がいたから。

「……私は弱いなー」

 きっと手に取るかもしれない杖を見てボソリと呟いた。

 弱いな、心が。ユウマは強いのに。

 綺紀は黙って話を聞いているけど、きっと思っていることに差は無い。彼女もまた暗い表情なのだから。

 周りを見る。信木にも一にも力があり、私たちは守られている。なんて弱いんだろう。そう、口にしかけた。

「……ユウマが強いわけないじゃない。あいつ、力もだけど心もきっと」

 そうシルが言いかけた時、ノムが飛んでこちらに戻ってきた。

「シル〜、交代!」

「……わかったー」

 シルは気怠げに前に出て、そしてノムは私と綺紀の頭をポンと叩く。

「いやー聞いてたよー? でも安心しなって!」

 彼女はニコッと笑い、さらに衝撃的なことを口にした。


「だってユウマ、元々魔法適性無いんだから!」

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