偽りの力 1
「………合流できて、よかった」
「ユウカ! マヤ!」
二人の元に駆け寄る。彼女たちの足元には先程の子供が地に伏している。
するとマヤは、その子供が持つ赤いナイフを手に取り、その表情はかなり険しいものとなった。
「…ユウカ、これ」
そのナイフを今度は優華に渡し、あまり変化を見せない彼女の眉間にはシワがよっていた。
「………『魔鉱石』が、混ざってる?」
「マコウセキ?」
突然の単語に私たちは頭に『?』を浮かべたが、優華は刃の腹を触るように促し、私は触ってみる。
「…あツッ!?」
明らかに普通のナイフが発する熱さではない刃に反射で手を引っ込め、その反応に信木達も少しずつ『マコウセキ』と言う単語から来る危機感を感じていく。
「………『魔鉱石』。現地点『地球には』存在しない鉱石。魔力の塊でもあり、唱えるだけであらゆる魔法を放てる」
「さらにこのナイフ、すでに術式が組まれて自動発動状態。……それも『付与・炎』とは随分贅沢な魔法じゃの?」
「ね、ねえ?」
綺紀は恐る恐る手を上げ、
「……もしかしてユウマさんかマオ、ユウカが関わっているって事はないよね?」
もっともな意見に二人はしばらく沈黙し、そんな二人をみんなは静かに待った。
現状、綺紀の懸念はもっともで『魔法』と言う概念はこの世界にはない。
倒れる子供は、確証まではないけど『異世界人ではない』と思っている。
だとするとそのナイフはどこから来たのか疑い、行きたく先は彼女たち、あるいは湧磨か麻央になる。けど––––
「––––『フレイムバスター』!!」
その背後に、敵がいたことにも気付かずに、すでに詠唱し終えた魔法が放たれていたことに。