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魔王と勇者に好かれた者 [再修正しますm(_ _)m  作者: ヨベ キラセス
第二章 幼女会長と暗殺者に思案したもの
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理解して怖いこと 4

 私と男は平和湧磨に目を向ける。

 彼の背後にはひょこっと花が顔を出した。

「お嬢様!?」

 そんな私の発言と同時、男は地を蹴り湧磨の前まで接近していく。

「くっ!!」

 違う。奴の狙いはその背後の花だ。


「「!!?」」


 しかし奴の右手の短刀は、湧磨の人差し指と親指で摘むように止められている。

「ほー、てっきり遠距離専門かと思ったが」

 上に向けて振り払い、

「……まあ関係ないか」

 すかさず湧磨は回し蹴りを喰らわした。

 見事奴の腹にめり込ませ、そして男は私の脇を駆け抜けて、盛大な音とともに壁にめり込んだ。

「さ、島釜先輩」

 目を離している間に湧磨は花をお姫様抱っこしこちらに歩み寄り、

「こちら、割れ物注意な荷物でございます」

 と、私に差し出す。

「ひゃ、ちょ!?」

 花は少し暴れたが、私は彼女を優しく抱き抱え、抱きしめていた。

「あ、あのイナツ? ほら後輩君が見てるって!」

「……よかった」

 抱きしめているため彼女の表情は読めない。だが、彼女は途端に静かになる。

 私は再度彼を見るが、彼はすでに背を向け、あの男から庇う位置で立っていた。

「さ、そろそろ観客が待っているっすよ? 主役は早く行ってください」

「……いや、あの男は強い。私も––––」

 と口にしようとしたが、途端に背筋に悪寒が走る。

 平和湧磨の背は、目に見えている以上に大きく見え、その迫力に、初めて私は後ずさっていた。

 しかしその背と真逆に、彼の穏やかな声が響き渡る。

「いいっすよ先輩。ここは後輩らしく先輩に花を持たせるって話っすから。花先輩だけに、ってね」

 苦笑まじりに彼は告げる。

「……ほら、演出家は表舞台には出てはいけないんですから、早く行ってください。……俺、心から応援してますから」

「……すまない」

 きっと今はただ足手まといだ。いつもなら立てるかもしれないし二人なら勝てるかもしれない。だが……今ここには花がいる。あの男に狙われれば不利にしかならない。

 しかし彼は未だ穏やかな声でさらに告げる。

「そこは謝罪じゃないっすよ先輩」

「……ああそうだな。ありがとう、平和湧磨」

 私はそう言い残して、彼女を抱きかかえて一本道を駆け出した。



 後方で響く攻防戦が遠くなり、私は彼女を一度おろす。

「……お嬢様」

「…ええ」

 言いたい事は分かっているようで彼女はうなずき、私と彼女の足に鉢巻を結ぶ。

 彼の思いに応えるためには、まず外に混乱を持ち込まない事だろう。

 彼は、いや彼らはそのために今、各所で戦っている。だからこそ、彼らの努力を無駄にしないためにも私たちは再び二人三脚に戻る。

 ルール的にはもう失格かもしれない。だがそれとは別に、私は––––。

「お嬢様……」

「…うん、なにかな?」

 久しぶりに聞く彼女が私に向ける言葉。

 一方的な気持ちで避けてしまい、避けられていた日々。

 その間に色んなことを考えた。

 そして答えがようやく出たものの、今日まで私は怖くて言えなかったこと。

 拒絶されれば私は彼女の元を離れないといけない、そんな気がする覚悟を。

 だが、今日ここで彼女に言わないといけない。


 だが、ここで言うのは早いだろう。


 演出家と自称した彼を思い苦笑し、きっと彼がやりたい演出を、私は彼への敬意を込めて敢えて乗ることにする。だから、

「……ゴールの先で、私に伝えさせて欲しいことがあります。なので」

 私は柄にもなく息を整え、そして、


「今、私と共に歩んでもらえませんか?」


 差し出した手を彼女はにこりと、『あの日』のように笑って取ってくれた。

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