理解して怖いこと 1
「…頭おかしいでしょここ」
「いやまあ、確かにかなり迷ったけどさ」
更識は憤慨する。湧磨が置いてあったこともそうだが、この建物の地味にくる嫌がらせ感がヤバかった。
実は度々電気が消えたり、曲がり角でホラー画像が貼ってあったりしたらしいが、オレの道には無かったからただ運のなさに哀れみを送る。
更識は怒りを込めるが、どうも目尻の涙に気付いていないようだからほっといた。でないと後が怖い。
「…どうするハジメ?」
「そうだね。一応一本道だけど」
そう、現在は広い一本道にいる。いや先ほどの狭さからするとかなり広く感じるだけだが、それでも安堵の度合いがすごい。
「ユウマと合流できればいいが、あいつの鉢巻は赤だったしな」
「なるほど。他のドアはなかったし、別々の方角に向かっているのかもな」
そうこうしていると、ようやく次のドアの前まで来た。今度はただの木目だったが、更識は完全に警戒している。あれだ、威嚇する猫だ今のこいつ。
一が宥めつつ、オレとキキは開けた。
そこに広がっていたのは土や砂利の地面で、凸凹だったり山だったり。
ただわかるのは、見た感じはあまりに普通だということだけだった。
「実は地面がロールでとか、実は強風で進みにくいとか、そんなのか?」
「さあ? 進んでみるか」
オレたちは恐る恐る、一歩一歩前へ進む。
だが、甘かった。
「––––しゃがめ!」
とっさにしゃがむ。するとある方角にある小山に、無数にぶつかり跳ねる音がした。そして上空に何かが飛んでいく。
そのうち、壁から反射してコロコロと転がる物体に手を伸ばす。
「……スーパーボール」
「それもう一般人にやる障害物じゃないでしょ!?」
止んだスーパーボールの雨を見て更識は叫んだ。
「いいから駆け抜けるぞ!!」
正直どこからくるかなんてわからない。なら駆け抜けるしかない。それが狙う前に。
「もーなんなのよーー!!」
文句を垂れつつオレたち四人は駆け出した。途端に再び飛んでくるものがあったが、後方から近づいてくるのを無視してひたすら走る。
意外と走りにくいがさすが自衛隊コンビ、意にも返さず駆け抜けて、ドアノブを––––
しかし横から響き渡る爆発音に手が止まる。
「な、なに––––」
しかし視線が向く間際、ドアノブに触れていないにも関わらず回り、そして開く。
そのドアの先、数センチ身長の低い少年が一人、気味悪い笑みを浮かべる。そしてその右手に握られたナイフが、躊躇いなく脇腹に––––
「『エアッ!!』」
横から強風が更識と一を吹き飛ばす。壁に衝突するも、二人はすぐに体制を立て直す。
かというオレたちも他人の心配をしていられない。キョトンとした少年は左手から拳銃を取り、そのまま銃口を向けてきた。
「危な!!」
オレたちはすぐ近くの小山に隠れて銃声に肩を震わすキキを抱きしめて身をかがめる。
数発の銃声の後、その少年と思しき声が悲鳴に変わって止まった。
オレたちは恐る恐る頭を上げると、そいつは倒れ、そこに立っていたのは傘木と煤野妹だった。