ブラックハウス 3
「別れちまったな」
「……そうね」
オレとキキは、変わり続ける迷路を彷徨っている。
進む道があると走ればすぐに閉ざされ、ありもしないところにいつのまにか道は現れ、いまだ進んだ実感はない。
「おーい! そっちはどうだー!!」
完全密閉されてるわけではなく、天井と壁の間に数十センチの空白があり、声はちゃんと届いて一が答えた。
「ダメだ、よく分からない」
「もー、何なのよこれ!!」
続けて更識も弱音をはく。しかし声の方向はよく掴めず、距離もわからない。
「とにかくヒントはないのかー!」
「わかんないわよ!!」
「……ていうかユウマは?」
そこでようやく分かったが、潜った最初は声がしていたが、いつのまにか応答のない悪友に今更ながら気づいた。
「……あいつ絶対抜けやがった。こうして張り上げて反応ないなら煤野たちもいないんだろうな」
「はあ!? あの男!!」
更識は怒りを込めるが、そもそもあいつは協力する気があったのか考えれば分かった事だ。
あいつはむしろ欺いたんだ。あのヤロー……。
「……ねえノブキ」
「なんだ?」
グイッと袖を掴まれ、オレはキキが指差す地面を見る。そこには赤、黄色、青の矢印がバラバラの方角を指していた。
「それがどうしたんだ?」
「ちょっと後退」
キキに従い後ろに下がり、
「前」
今度は進む。すると正面の道が閉ざされた。そして代わりに右に道ができる。
「……もしかしてだけど、同じ色の通りに進めばいけないかな?」
「それね!」
すかさず更識の声が被り、そこから遠くでガシャガシャとけたたましく音が響いき、その音が止み……。
「……色が合わないから入れないって何よ!!」
更識の絶叫が響いた。そこでオレは色に関連するかもしれないものに目がいく。
足に巻かれた鉢巻。確か色は三種類だったと認識している。
実は開始前、オレはキキと走ることに関して色をどうすべきか聞こうとしたが、有無を和さず渡され、周りを見て特に規則的なものではないと認識していた。
まさか、とは思ったが、
「…キキ、青だ」
「…わかった!」
数十分の謎が解けたためかキキはニコッと笑った。そして分岐のたびに青の道が開くまで前後しつつ進み、ようやく青い扉の前まで着いた時に疲弊した更識と涼しげな一と合流した。二人の色は言わずもがな『青』だった。