ブラックハウス 2
通路を抜け、俺たちは言葉を失う。
「……迷路、だってよ」
信木は看板を指差す。『迷路』、ただそれだけ書かれた看板と、二人程度の通路。
「んじゃ、俺ら先な」
「あ、おいユウマ!?」
俺は会長と共に真っ先に通路を通った。すると、
ガシャン
「「!?」」俺たちは数は歩いたところで後方から音がして振り向くと、通ったところにはもう通路はなかった。
「……まさか、変化するのか?」
実際今、ただまっすぐ行っただけなのに後方は既に閉ざされ、よくよく振り返ってみると前方も変化し、一本が二本に変わっていた。
「……後輩くん、これは少し面倒だね?」
「ええ、そうっすね」
考えたくないが、さすがに法則なしなんてことは無いだろう。だが、現状では何もわからない俺たちは、ひとまず適当に進んでみないことにはわからないだろうと、俺たちはただ歩くのだった。
数十分経つ。いまだに出られない。
「……こってるっすねー」
「こってるわねー」
特に会話はないが、別に会長も四六時中話しているわけではないようでその静けさが意外と心地いいのだ。
だが、まあさすがに出ないとまずいかとは思う。
「…喉乾いたー」
「サイダーとコーラ、オレンジジュースにリンゴジュース、あとのむよー」
「まってまって!! そこは普通『早く出たいですねー』とかじゃない!? というよりなんでそんなに持っているの!?」
「禁則事項です。で、何飲みます?」
「……キンキンに冷えたサイダー」
「意外っすね」
俺はあえてわざとと分かっててキンキンに冷えたサイダーを渡す。彼女は少し悔しそうにした。
「……意外かしら?」
「ええ。お嬢様ときたら紅茶とかかと。少なくとも炭酸系はないかと」
「あるの紅茶?」
「ええ」
と今度はティーカップを出してみると、彼女はお手上げと言いたげに手をあげた。
「別に私だって今時の高校生よ? 自販機にも行くし、冬ならおしるこだって買うわ」
「あーいいっすねおしるこ」
あったでは小豆に変わるものがなかったから唯一作れなかったもので、ここに来て一度目におしるこを買った記憶が今も濃く残っている。
「……実はあったりするの?」
「ありますよ?」
「……流石に今は飲みたくないわね」
「まあさすがに嘘っすけど」
「ちょっと!」
揶揄うのは実にいい。よくカナコやユウカで遊んだりしたが、ただマオだけは一つ間違えると厄介なことになるからあまりしないけど。
よほど喉乾いていたのか飲み干したペットボトルを受け取り、俺たちは再び変化する迷宮攻略を始めるのだった。