ブラックハウス 1
『……』
なかなかにカオスな競技だったと思う。騎馬戦も、借り物も、その他の競技も。
しかし、しかしだ。それでもまだ良かったかもしれないと思う。なんだかんだルール等は多少でもしっかりと見えていたのだから。
だが、と俺は目の前の光景に苦笑いを見せる。
「……こんな建物あったか?」
それは黒塗りの建物で、かなりの広さで、ただそれだけ。言うなればブラックボックスならぬ『ブラックハウス』だ。
おかしいと思ったんだ。なんか覚えのない看板があり、その道は木々が生い茂って、抜けてみたらこの建物……。
俺は徐にスマホを出し、一人の少女に繋いだ。
『あ、ゆう兄?』
電話の先はかなり賑わっていて、微かだが吹奏楽の演奏が聞こえた。
「おい、これは種目が?」
『うん、その建物は私が急遽手配したの! …で、そこに着いたのが見えたから文化部の披露会をしていたんだー。ちゃんと事前に手配してたんだよ?』
「……で、これは何があるんだ?」
『えー、教えたらつまらないよ! ゆう兄なら凄くしてくれると信じているよ!』
と声が遠くなり、多分通話を終了しようとしたのだろう。
「ちょ、おいま」
『あ、言い忘れてた!』
止めようとする俺に被せ、ミサは通話越しからも分かってしまう笑顔で、
『ちなみにここまでは飛空カメラで撮影してたけど、出るまではしばらく映さないから!』
そして今度こそ、通話は切れた。
「……どうするんだユウマ?」
ノブキは、いや周りは既にこの状況に何か言いませず俺の言葉を待っていた。
多分嵌められたな。現在先に入ったであろう麻央と島釜ペア、そして優華と舞夜ペアを含め、今この場にいるので全員であり、ハナから常人に勝たせる競技じゃなかったんだと実感した。
「ミサは来年もそうしないように後で説教だ」
前を向くしかない。ここまで来たんだ、後戻りしても意味がないだろう。それに……。
「……ゲームなら高難易度クエスト、だよな? やらないってのはゲーマーとしては恥だな!」
「だとよお前ら! 競争ではあるが全員で突破を目指しつつ競おうじゃねーか!!」
「ほんと何言ってるんだか」
更識は言葉とは裏腹に皆と同じ笑みを見せ、俺たちは全員でその建物に入った。