ハンデ壊し 2
「ぶはっ!! お前それで走ってきたのか!?」
信木は爆笑するが無理もない。
頭二つ以上の身長差で勝つのは、まあ普通に無理だ。歩幅が合ってないから。
だからあえて俺の右足にしがみつかせた。別に「一緒に走らないといけない」わけではないとミサには聞いていたし、今更文句言う奴は誰もいないだろう。むしろ圧巻し、そして信木のように爆笑することだろう。
だが実際、これでトップまでの距離は縮めたし、普通に高難易度だからプラマイ0だ。 ……まあ、魔法ってチートは多少織り交ぜたが。
「ふふふ……さあ行こう後輩くん!」
と足のところからノリノリだった会長の声に促され、俺は踵を返す。
「そっすな会長! 貴様らはせいぜい三位の取り合いしているのがお似合いさ!!」
俺たちは言うだけ言い、再び有り余る力で俺は風の如く駆け出した。
「……ぷっ、アイツらしいな」
「……なんか馬鹿らしくなるわね」
「……待てやこらー!!」
「負けてたまるかー!!」
信木と更識は同時に駆け出す。わかっている2人の相方は足を引っ張ることなくスムーズに俺たちと差を詰めてくる。腹から声を出しているわりに、彼等は笑っている。
『競技』とは、やはり死力を尽くして競うことにこそ意味があるだろう。
あと少し、それが楽しくて仕方なかった。
さあ楽しもうか、どんなに辛い現実が目の前にあっても、いまあるひと時だけでも。