『策士』か、『うつけ』か 2
「はい、静かになるのに十分かかりました」
とノブキが、とうとう怒った文坂によって静まる俺たちに放った最初の言葉。あ、なんか投げたくなった。あいつと違うチームを望みたいな。
「さて、ここにくじがあります」
とドン、と机の上に四角い箱を置く。てか机どこから拝借してきた?
「さて、ここにはAとBの紙がある。それぞれとって、同じアルファベットのやっとチームを作ってくれ」
ノブキの指揮は満場一致で不服だが、ひとまずこれ以上遅延せぬよう全員紙を掴んだ。
と、言うわけで。
「チームAはオレ、サトシ、更識、煤野。Bはハジメ、傘木、キキ、そしてユウマだ」
「「異議あり!!」」
「却下だ」
俺はノブキの発表を不服とする二人の女子の発言を棄却する。不正? バレなきゃ不正になんねーんだよ。
二人除いてくじは公平。しかし当の目的「更識と麻央の仲の良好化」を果たすには、この二人だけはどうしても一緒にするしかないのだ。絶対敵同士にしたら拗れる。
「改めてルール説明だ。基礎はドッジボールと大差ない。20×10の長方形、動ける範囲は10×10、今回は人数の関係で外野1。なお外野は相手をアウトにすれば戻ってもいい。そしてボールが特殊。細かいルールは無しにして、体の一部に当たって地面に落ちたらアウト。キャッチするか、当たった後に味方が地面に落ちる前に拾ったらセーフ。顔面は、このボール的に危険性はないためアウトとする。大まかな説明は異常だが、質問等がなければ始まるぞ?」
特に質問もなさそうなため、各自最初の外野を決めることにした。
さて、少し聞き耳を立ててみようか。
「じゃ、誰がやる?」
「煤野さん」「更識さん」
「……更識さん、どうぞ外野へ」
「あら、煤野さんこそ外野へ。私、味方に当てられたくないから」
「あはは、ぼ––––あたしが味方を見間違えるって言うの? まあ、そうしそうな人が言うと説得力あるわね」
「アハハ、いいじゃない。だったらなおのこと外野へどうぞ?」
「いやいや、ユウマに危険がありそうだし外野行きなよ。あなたにパス回らないように全員アウトにしてあげるから」
「そう? 無理じゃないかなあなたじゃ」
「「……なに?」」
よしもっとやれ。ノブキ困らせろ。
「……ユウマさん聞いてる?」
「ああすまん。で、誰かやるのか?」
こちらはと言うと、今のところ立候補はいなかった。
「じゃあ僕が」
と手をあげる沢上を制し、
「いや、勝利を目的にするなら俺が出る。いい考えがあるんだ」
俺の企んだ笑みに、全員何か諦めたような笑みで返されたがまあいいか。