借り物…だよな? 4
「あいつぜってー道連れにする……」
「何ぼやいてんのよノブキ」
と、オレの背中を綺紀が叩く。
「って! お前なー」
「はいはい、どうせまた何か企んでんでしょーけど、今度は負けないからね!」
と突きつけられた人差し指に、オレはため息をこぼし、
「……ま、負けねーのはオレもだ」
ニッと笑ってやると、綺紀もニッと笑った。
「さて、お題はなんだろうな?」
オレと綺紀は凛堂を見る。彼女はまた嫌に笑顔で嫌な予感しかないが、まあなんとかなると思ってたりする。
だって大体正解者いないし、ここで落としてもいいだろ?
凛堂は一呼吸し、出題する。
『じゃあ君たちは……そろそろ連れてこれる人にするねー』
やはりわざとか、と思ったのはオレだけではないだろう。
彼女はウンウンと悩み、そして出た言葉は、
『……よし、自分が思うアレな本を持ってきて!』
だった。
「…おい、どうしようか?」
「……え、それって…」
しかし各々なかなか動こうとしない。女子は赤くし、男子は少し狼狽する。
綺紀は、そもそも問題の意図を理解していないのかすごく悩んで蹲るため、オレは点数稼ぎに綺紀の手を引いてゴールテープを通った。
「え、あれ?」
「…ほらよ!」
オレは服の内側から一冊の本を取り出して綺紀に渡し、オレも腹に忍ばせた一冊を取る。
「…『古典』の教科書? と言うかなんで本を忍ばせてるの?」
「いやいや、いついかなる時に対しての対策さ!」
と歯をむき、ようやく、初めてグラウンドまで降りてきた凛堂に渡した。
「……ほうほう、そっちもかい?」
「ええ!」
「…よしわかった! 二人とも合格!」
よし、とガッツポーズする中、未だ分からないと言いたげな表情の綺紀に、凛堂は「開いてみな?」と促され開く。
「いやー、なかなかの勇気だね一年生!」
「ははは、それほどでもー!」
物が物だけに周りからの称賛はないが、まあこれでクラスに貢献できたしいい––––
「ふん!!」
「のあっと!」
瞬間、殺意を感じ避ける。
綺紀が、真っ赤になって涙目で、あのフライパンを振り下ろしていたのだ。
「お、おいどうした! 感謝されても憎まれるいわれは」
「あんたを殺してわたしも死ぬ!!」
「いやわけわか––––また振り回すな! やめろ! 来るなーーー!!」