借り物…だよな? 3
「…よし」
男はライフルを構える。
先日あの十二士が失敗したと聞き、出世するチャンスと思い、単独でターゲット『松尾花』を狙う。
「……しっかしあの男邪魔だな」
男は平凡そうな男のことを知らず、影になるため簡単に打てずにいた。
「あーもー、あいつも撃っちまうか」
苛立ちを感じた男は、そして一人の男にポイントを合わせ––––
ガッ、と何かが銃口に突き刺さった。
「な––––」
突然のことで理解が追いつかず、そのまま昏倒させられた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「……」
何という早技か、島釜は一人の男を引きずって現れ、もう片手に持つ狙撃銃らしきものをガジャッ、と自慢に放った。
『オッケー、島釜合格!』
その声を背に、島釜は男を引きずってその場を後にした。いや、可愛そうだから引きずるなよ。
「んじゃ、行きますかね」
信木は出番が回ってきて立ち上がった。
「ノブキ」
俺はそんなあいつを呼び止める。
「お、なんだ? 激励か!」
「……ノブキ」
「おう、なんだ?」
「お前は実は頭が良い」
「おうそうさ!」
「だから薄々気付いているだろうが」
「おう、期待するまでもなく勝てることをか?」
ノブキの地震に満ちた顔に、俺は肩を手を置き、
「……お前に俺に降り掛かったかもしれない『ラッキースケベ』展開を全乗せする魔法をかけている」
「テメーのせいか!!」
信木は襟首を締め上げる。
「最近おかしいと思ったんだよ! 何故か男子更衣室と女子更衣室間違えたり! 転けた拍子に女子のスカートを下ろしちまったり! 明らかに有り得ない展開が多いのはお前のせいか!!」
「まー良かったな」
「よくねーわ!!」
血の涙を流す信木は怒りがこみ上げていた。
「いいかノブキ、誰だって『ラキスケ』を欲しがる男子はいるんだ。お前が選ばれた、それは誇らしいだろ?」
「テメーが背負え! この一年分お前のだろが! 俺の尊厳返せ!」
「返す尊厳あるか?」
「やかましいわ!!」
『ほらー、小中くん早く出てきなさーい』
アナウンスされ、すごく不服そうに手を離した信木は、諦めたのか傷心しきった背中を向けてトボトボと歩いて行ったのだった。
俺は、そんな彼の背中に激励の言葉を向ける。
「……喜べ、今度倍化してやるから!」
「テメー地獄に道連れにすんぞコラァ!!」