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魔王と勇者に好かれた者 [再修正しますm(_ _)m  作者: ヨベ キラセス
第二章 幼女会長と暗殺者に思案したもの
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濃霧の朝 3

 坂波成 1C担任 担当科目古文・語学・英語

 基本は眉一つ動かないため、周りでは『鉄仮面』と影で言われていたりする。若干怠慢な面も目立つものの、その全てをひっくるめるほどの教養から信頼は厚い。普段は信木の居眠りを古き良きチョークで起こすことからスナイパー並みの正確さもあり、しかし担当の部活はなし。


「ほら、お詫びだ」

 坂波は缶コーヒーを二つ、俺と麻央に手渡す。

「…うぅ」

 どうやら麻央はブラックがあまり好きではないようだ。かといって俺もブラック。子供舌な麻央はそーっと俺の方に缶をおく。

「ははは、冗談だ」

 と坂波はわざとか、懐から出したのは今度は『苺ミルク』だった。

 おそらく二重に皮肉ったつもりかもしれないが、麻央は笑顔で受け取って半分一気した。

「…普通殺そうとした人間の懐から出たものを一気する?」

「だって毒効かないし、麻痺効かないし、睡眠効かないし」

 と指を折りながら数える麻央にさらに笑う坂波。

「…んで、なんで麻央を狙ったんですか?」

 俺の問いに、彼女は苦笑しつつ答えた。

「…いや、別に彼女だけを狙ったわけじゃない。たまたま一人でいたから狙った。まさかヒラナゴがいるとは想定外だったけど」

 自身の缶コーヒーを飲み干して、カゴに投げた。ピンポイントに、弧を描いてど真ん中に。

「で、あなたたちの命を狙ったわたしは許せる? 殺した方が安全じゃない?」

 麻央が剣を出しかけたが制し、俺は坂波の目を見据える。

「…悪いっすけど『殺人道具』に麻央を使わないでもらえますか?」

 彼女の意図はなんとなくわかっていた。

 あの時、殺気を向けた彼女は、手にしていた二本のナイフを使おうとしなかった。『使えなかった』じゃなく『使わなかった』のだ。


 殺す気なんて、本当はなかったのだと。


「……やはり君は奇妙なガキだ」

「別に、俺は麻央に無駄に人殺しはさせないだけです」

「なら、今から殺そうとすればせざるを得ないか?」

 彼女は再びナイフを手に、刃先を向ける。

「…俺も殺したくはないですし、『平和流』は無駄に生物を殺さない流派です」

「…『平和流』、か」

 坂波はナイフをしまう。

「……そんな綺麗事が、いつまで通じるか」

「通じますよ」

 俺は晒さず見据え、坂波の見開く目を見続けた。

「俺はどんな手段でも現実にする。偽善でも義勇でも、悪でもなんでも」

「……お前なら、戻せるかもな」

 坂波はどこか諦めたような目をしている人だった。だが今、彼女の目にその言葉は当てはまらないだろう。

 坂波は姿勢を正し、頭を下げた。

「……虫のいいことは分かっている。だがどうか、わたしの部下を止めてくれ」

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