『策士』か、『うつけ』か 1
「宣誓! 我々選手一同は、日頃の鍛錬を見せしめるべく、清正! 堂々! あらゆる卑怯な手も駆使し、スポーツマンシップを蹴っ飛ばして闘いたいと思い––––」
「なんなのよこれ!?」
ああ、ここまで言ったら最後まで言わせてくれよ。たった二言とフルネームのみだろう?
現在時刻10時ちょっと前、河川にて指定ジャージを来た高校生八人。そして何故か商店街の奴らとかがギャラリーでやってきていた。
曰く、信木が電話後、商店街の人たちにふれ回ったらしい。何してくれてんの? ドヤ顔すんじゃねーよ。
「ふぉんふぁふぉほひふふぁふぉ」
「食いながら喋んな!!」
しまった、つい出店でてたからつい買っていた。朝ご飯食べてないから負けたのか……この、商売上手な商店街の連中め。
「……そんなこと言うなって。そんな親しくないから気が立ってしまうんだよ。いいか? まずは相手の長所を掴むところから会話を」
「そんな講座はいいのよ!! いい? そもそも––––」
しかし、突如彼女の顔に緑色のボールのようなものが直撃した。
「おー! すごい柔軟性だねこのボール!!」
麻央が投げたようだ。今日のために用意した特注のボールを。
そのボールはスライムのように柔らかく、今みたくかなりの勢いで当たると顔面の輪郭が分かるほど沈み込み、それでいて『記憶形成』で元のまん丸に戻って、地面にも弾む。自分で作っといてあれだが、ある意味ダークマターだ。
ところで視点はボールから彼女に戻すが、ああ、すげー怒ってらっしゃる。なんなら少し衝撃が吸収できていないのかもしれん。
「……何すんのよー!!」
目を釣り上げ、鷲掴んだボールを麻央目掛けて放つ。うん、あれは『放つ』であってるな。
「へぶぁ!?」
あーあ、と優華は呆れた目で麻央を見ている。
同じように輪郭作った麻央は再び投げ、今度は不意ではないためキャッチし投げ、そこから豪速球なキャッチボールに移行した。
「止めなくていいのかい?」
流石に苦笑いの沢上は、しかし河川敷にて黄色い声援を浴びているのが少し気にふれ、いつのまにか至近距離で予備ボールを投げた。