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濃霧の朝 1
「……あれ…ユウマは?」
寝ぼけ眼なマオが男子の部屋に来た。理由はもちろん湧磨だが……
辺りを見回してみるものの、湧磨はいなかった……。
もしやと食堂に着くと、シェフが両腕を組んで首を傾げていた。
「……おやお客人」
「おはようございます。……何かありました?」
「いや……彼は随分と手慣れていたなとね」
そういい、重箱を指差す。
「朝方、お嬢様の朝食と昼食の準備を始めようとした時に君のお友達が来て、手伝いながら見せて欲しいと言われてね。なかなかの手際だったよ。彼を弟子に欲しいな」
と笑っていたが、おそらく湧磨だ。
「それで、彼は?」
「あー、確か用事があるとかで自分の朝食、昼食を詰めて屋敷を出たのを見送ったよ」
「そうですか。僕も早く出る約束しているのでお弁当もらえますか?」
そして数分で包んだ弁当を二つ持ち、屋敷を急いで出て学校に向かった。