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終わりの鐘は硝煙に交じりて 1
『準備はいいか? 対象は一撃で仕留めろ』
「......ああ、分かってる」
スコープは平和湧磨に向く。
奴の行動は奇想天外、予測不可能なものだった。波の狙撃手なら撃ち殺せないだろう。
「......俺は例外だが」
慢心ではない。これは事実だ。
俺は何度もこのスコープに移る敵を老若男女問わず打ち抜いた。ミスは、あの夜だけだ。
「自身もないものに成功は収められない」、あの人の教えだ。
引き金に手をかける。これで終わる。
引き金を––––
「!」
俺はそこで引き金から指を離す。
妙な違和感、まるでこの感じは———
『...どうしたツカサ、なぜ』
俺は通信機を取る。再び向ける銃口は平和でも煤野でも傘木でも、松尾でもない。
俺のスコープはノーマークの『文坂綺紀』に向けていた。
あの女は、脅威になると警鐘する