非常識の衝突 4
「下がれ!!」
三人同時に後方にジャンプした事で難を逃れたが、観客席側から現れるとは想定外だった。ダン、と地面に少し足を曲げて着地したそれは、
「……騎馬が二人かよ」
前を麻央、後ろを優華が担当し、騎手は変わらず綺紀。
優華が両肩を掴み、麻央が両足を掴む。
「……マジで、どうやって入れ替えたのか知りたいもんだよ」
「そんな事、知る必要はないよ……」
殺意増し増しの目で突撃。避けるだけで精一杯だが、相手の機動力が上がっていた。
「この! この! このっ!」
「ちょ! やば! マジで!」
よく三人でやるな、と感心している余裕もない。
「下がれ!」
ひとまず距離を置き、頭を回転させる。
あの機動力がネックだ。二人に対して三人じゃ小回りに差があるし、そんな状況で持久戦はまずいし。
それに、と俺は信木を見る。
「……挫いたか?」
「……悪い」
相手の機動力もだが、先ほど後方に飛んだあたりからガクッと動きが悪くなった気がしていたが、どうも信木が右脚を庇っていた。
「マジかノブキ! ……どうするユウマ」
「………」
このままじゃ勝てない。まあ元々勝てるか分からない戦いだし、負けてもこれ以上文句はないだろう。
だが、下三人はそう思ってない以上、俺は最善を考えないといけない。
こちらも二人にするか? それともいっそ一人に。
だが、その方法は余計に悪化するだろう。それなら———。
そこで俺は一つ思いつく。それは俺以外にも思いっきり技量が必要な、そんな方法が。
「……なんだ、思いついてんじゃねーか」
躊躇ったが、信木は察していた。
「言えよ。どうせここまできたら勝てる方をやる。……例え難易度高いやつだろうとな」
「………」
俺は覚悟を決め、あるものを探した。
「……行ける、か」
俺は三人にだけ聞こえる声で策を告げた。