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「く、来るな! 来るんじゃねー!!」
スーツの男が尻餅をついて涙を流しいている。霧たちこめる路地、どんなに叫んでも誰にも届かない声は、霧の中で輪郭しかみえない丸々とした巨体の腕が男の首へ行き、「ゴキッ」っと音を立て、動きを止めた。
「ふーん......ま、そんなものか」
と視線を背後に向ける。そこにはもう複数体の巨体に弄ばれて終わった、心が壊れている女が数人に男二人、死体三人。
「お前ら片付けとけよ」
命令を聞いた巨体は、転がる人間をガブリつき、ものの数分で完食する。
「中々なことするね」
霧が解けかけるころ、あの司祭がやってきた。司祭を自称しつつ今の光景を嘲笑するそいつは、ぶっ壊れた性格を持つようだ。
「と言いつつ、全く動じないな」
「まあ、死こそ最大の救済だからね。それに『アレ』に喰わせておけば魂が集まり、『アレ』も強化される。良いことしかない。何よりこの世界の生物では対策できないからこそ効率が良いのさ」
司祭は片手に持つ小さな石を覗きながらさらに笑う。
「さ、もっと楽しんでくれたまえ。まだ使っていない能力もあるだろう?」
司祭は満足げに姿を消し、霧は晴れた。